第6話 斜陽
放課後、職員室から帰ってきたロイス(
【超極秘 新しいセーフハウスが決まったので今日からそっちに帰宅するべし。場所は以下の画像から確認すること 以上】
という簡素なメッセージであった。ロイスは超極秘という文字がちょっとアホっぽいなと思いつつ、送られてきた画像を確認した。そこにはかなり高級そうなタワマンの画像が表示されていた。住所も画像に書いてある。808号室らしい。
くるりと教室を見回すロイス(
「(……しまったな。護衛対象を見失うとは)」
既に帰ったか、部活動に行ったか分からない。変な気を回した担任に呼び出されたせいだ。まあいじめの事実を知りつつも黙認するような教師である。2カ月ぶりに登校した生徒を形だけでもフォローをした履歴が欲しいのだろう。極めて簡素なヒアリングであった。
「おや、
声を掛けてきたのは
「ちょっと聞きたいんだけど、
この国の高校生は授業の後、部活動という課外活動を行っている生徒が多いこともロイスはスマホで調べて知っていた。
「む?
瞬間カッと目を見開き、ロイス(
「悪いことは言わないでござるよ
「
「みんな
もちろんそんなことをロイスが知るわけがないのだが、どうも
「違うよ、そんなのじゃないって」
「む、そうなのでござるか?なら良いのでござるが。それはそうと
「あ、ありがとう。でも今日は遠慮しておくよ。少し大事な用があってね」
ロイスは見失った護衛対象を今からでも探しに行かなくてはならなかった。
「なるほど、用があるのなら仕方ないで御座るな。ラーメンはまたの機会に」
ロイスは少し寂しそうな
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夕日が赤く染まる頃、ロイス(
「……結局見つからなかったな」
ため息交じりの落胆である。いくらロイスであっても昨日来たばかりの異世界で行動原理も何も分からない他人を見つけることなど出来なかった。当然である。まあ、よかったことと言えば町中探し回ったのでここいらの地形が頭に入ったぐらいである。
しかし、かなり大きなマンションだとロイス(あやと)は見上げて思う。下手すると自分がいたシュラ国の王城より高いんじゃないかと思う。見た目もかなり高級な造りだ。
「……あれ?開かない……」
マンションの入り口まで来たロイス(
そこでロイスはピンとくる。自動ドアの向かって右側にあるコンソール。そこには何やら数字が羅列した盤とその上に小さい液晶があった。ロイスはそのコンソールに808と打ち込んで呼び出しボタンを押してみる。何度か家主を呼び出す音が響く。しかし、何回鳴らしても応答は無かった。どうやら千冬はまだ帰ってきてないらしい。
「困ったな、一体どうすれば……」
万策尽きて途方に暮れるロイス(
その時エントランスから一人の女性が歩いてきた。薄い青系のスポーツウェアを身に纏いいかにもこれからランニングに向かうと言わんばかりのその女性にロイスは見覚えがあった。
「……ん?」
その女性は自動ドアの前で立ち往生する不審な人物に目線を向けた際一瞬動きを止めた。
それは間違いなく今回の護衛対象である
「あなたは……、確か同じクラスの……」
なんでお前がここにいるんだと言わんばかりの目でロイスを見る
「こんにちは天宮さん。実は今日からここに引っ越すことになったんだけどまだ誰も帰ってきてなくて入れなくて困ってたんだよ、はは」
突然の護衛対象の登場に若干戸惑うロイス(
「へえ、そうなんだ。あなたのご両親事業が上手くいってるのね」
「え?」
「だって普通よりちょっと稼いだぐらいで入れるようなマンションじゃないわよ、ここ」
恐らく家賃のことを言っているんだろうということぐらいは分かった。一体どれくらいの金額なのかはロイスには見当もつかない。
「ま、私には関係ないわね。じゃ」
そう言ってあっさりと去っていく神無。これからランニングなのだろう。とても高校生とは思えないプロポーションはこういった日々の努力の賜物なのだとロイスは思った。
「あ、そうだ」
かと思ったらすぐさま振り返る
「余計なお世話だけど、あんたも少しは体鍛えたら?そんなへろへろだとまた
「あ、ああ。教えてくれてありがとう」
「別に。見ててむかつくのよね。あんたたち」
「……あれ?」
しばらく
「なんだろうこれ」
それは手のひらに収まるくらいの水色の物体であった。強いて言うならロイスがこの世界に来る前によく見た魔物、スライムによく似ていた。小さいチェーンのようなものもついている。
恐らく
「……明日でいいか」
どうせ明日も学校で会うのだ。ロイスはスライムの形をしたそれをポケットに入れるのだった。とりあえずロイスは神無のランニングコースを把握しておこうと神無に気付かれないように尾行を開始した。
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