第5話 不登校の理由
「なあ、もれと君。あれは何なわけ?ただの強がり?」
ロイス(綾人)は昼休みに体育館裏に呼び出されていた。どうにもロイス(
「何のことかよく分からないな、僕が何か悪かったのなら謝るよ。だからもう開放してくれないかな?」
ロイス(
いきなりきつめのボディブローがロイス(
「……ッ!!げほげほ……」
「ひゅ~♪健也君の拳パネェー」
取り巻きの一人が嬉しそうに言うと横からロイス(綾人)を蹴り飛ばす。為すすべもなく地面に倒れるロイス(
「げほっ!なんでこんなこと……」
ロイス(
「なんでって、テメーが教室でうんこ漏らしたくせに一言も謝罪もなく舐めたこと言ってるからだろうが。あ?」
「おい!ブタ!おまえパン買ってくるだけでなんでこんな時間かかるんだよ!」
「……ひぃひぃ。ご、ごめんでござるよ」
その時小太りの男子生徒が両手に大量の総菜パンを持って現れた。
「ちょうどいいわ。おい、うんこ野郎。チャンスやるよ。そこの豚と相撲勝負しろよ。勝ったら今回は見逃してやる」
「……え?」
驚き目を見開いたのは小太りの男子生徒だった。
「いいな、負けた方は明日の昼飯代を出すってことで」
「明日って、今日のパン代はどうすればいいでござるか……?」
「そんなのお前がぐずぐずしてるからわりぃんだろ。お前が払えよ」
「そ、そんな殺生な……」
小太りの男子生徒は絶望の表情と共に項垂れる。ロイス(
「ここじゃあ狭いな。相撲勝負するならあっちの花壇の方に行くか」
「なあ、どっちが勝つ方に賭けるよ?」
「さすがに豚が勝つんじゃねーか?見ろようんこ野郎の手足もやしみてえ」
「おら!さっさと歩けよ!手間取らせるな!」
「げ、誰かいやがる……」
先だって歩いていた
「おう、
「……ここ、静かで人が来ないから気に入っていたのに台無しね」
「あ?なんだって?」
「別にあなたに言ってないわよ。くだらないことしてないで勉強でもしたら?」
健也はブチ切れそうな顔をしていたが女生徒は涼しい顔をして去っていった。
「ち、お高くとまりやがって。むかつくぜ」
その時、
「おい、行くぞ」
「え?相撲対決はいいのかよ?」
「そんなことよりおもしれえこと思いついたぜ。くくくっ」
何故か
「た、たすかったでござる……」
小太りな男子生徒は心底胸を撫でおろしたのだった。
「あ、そうでござる!高瀬氏大丈夫でござるか!?ん、あれだけやられていたにも関わらず平気そうでござるな?」
「そんなことより、聞きたいんだけどさ」
「そ、そんなことなどと……痛くないんでござるか?」
戸惑う小太りな男子生徒にロイス(
「さっき本を読んでた人は天宮って言うの?下の名前は?」
「高瀬氏やはりおかしいでござるよ?頭打ちどころが悪かったのでは?」
どうやら小太りな男子生徒は本気でロイス(
「天宮氏は拙者たちと同じクラスでござらぬか。下の名前は確か神無(かんな)ではなかったか」
ロイスの直感は確信に変わった。これで護衛対象である。
「……そういえば君は……」
そこでロイス(
「まさか拙者のことも忘れてしまったでござるか?広田でござるよ。広田進」
どうやら小太りな男子生徒の名前は
「……しかし拙者少し安心したでござるよ。
そういえば教室でうんこを漏らしたとか
「まあ、団員……じゃないクラスのみんなには悪かったと思ってるよ」
「何言ってるでござるか!高瀬氏は何も悪くないで御座ろう。原因はすべて須崎たち郎党によるもの……」
急に声を荒げた
「原因が
「何をたわけたことを!高瀬氏も知らぬとは言わせませんぞ。あの日拙者たちはいつものように須崎たち郎党に目を付けられてゲームという名目で勝ち目のない勝負を強要されたではござらぬか。そして案の定負けた拙者たちは罰ゲームに下剤を飲まされ、授業中にトイレに行くことも許されずに高瀬氏は……。あのようなこととても人間のすることとは思えませぬ」
広田は苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てるように言った。
「下剤だって?」
「いかにも。高瀬氏はあの時須崎たち郎党にバレないように拙者の分も飲んでくれたではござらぬか。……だから拙者は申し訳なく……」
衝撃の事実だった。どうやら教室でうんこ漏らした事件の真相は大量に下剤を飲まされたことが原因でそれが須崎たちの仕業らしい。しかも
「どうして
「それは分かりませぬ。拙者たちのような弱い立場の人間を痛めつけるの好んでいるとしか思えませぬな」
もちろんロイスがいた世界にも序列は存在した。むしろこの世界より生まれた時から酷い環境で生きているたくさん人もいる。ロイスがスマホで多少調べたところこの世界、こと日本という国は治安が良く、飢餓や貧困に喘ぐ人も少ない豊かな国だと書いてあった。しかし、実際はこういう風に見えないところで弱いものを虐げる人間がいるということなのだろうとロイスは理解した。
「逃げないのか?」
「逃げる?確かに転校すれば須崎たちに会うことはないかもしれぬが、拙者は受験勉強を頑張って苦労してこの学校に入ったのでござる。親にも申し訳が立たぬし、とにかく耐えることしか今の拙者には……」
ロイスは驚いた。これほど不遇な扱いを受けたとしても
「それに須崎の家はかなりの名家で資産家なのでござる。その金にものを言わせ、あまり表向きには出来ない連中との付き合いもあるとかないとか。とにかく変に逆らうのはやめた方がいいでござるな」
どうやらごろつきとの付き合いもあるらしい。
「ふむ、奴隷商人かと思ったら地方貴族のドラ息子だったか……」
「どれいしょうにん……?なにを言ってるでござるか高瀬氏?」
怪訝な顔の広田をよそにロイス(
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