第7話 手当

 しばらく歩くとレントゥスの隊員達と合流できた。医療班もいる。ミディはそれに気づくと彼らに呼びかける。

「助けてくれ!怪我人がいるんだ!!」

「そいつは後だ!!」

 しかし断られてしまう。

「えっそんな...」

 ナハトは死なないためどんなに酷い怪我を負っても治療は最後に回されてしまう。

「いいよ。他の人の手当の方が大事だし。ミディも一応診てもらいなよ。魔力暴走してたから」

「分かった...じゃあ行ってくる」

 歩けるようになるまで回復したミディは医療班の元へ向かう。ミディが行ったことを確認したナハトはその場に崩れ落ちる。

「ぐっ...ぁ...」

 苦悶の声を漏らす。彼は不死身とはいえ痛いのは変わりない。

「はっ...はっ...はっ...」

 荒い呼吸を繰り返すナハト。それを心配する者は誰もいない。


 ミディは簡易的な検査を受けていた。一時的に魔力が不安定になっていたようだが問題はないらしい。一応帰還したら医務室で診てもらうように言われた。早くナハトの治療をしてもらわなければとミディは駆け足でナハトの元へ向かった。すると、さっきまでナハトがいた場所には誰もいなかった。しかし大きな血溜まりと血の跡が残っている。体を引きずったようなその痕跡は岩陰に続いているようだった。跡を追うミディ。そこにはナハトが倒れていた。

「ナハト!!どうしたんだ!?」

「やっべバレちゃった」

 ナハトはミディに苦しんでいるところを見られないよう隠れようと移動していたが途中で力尽きてしまったとのこと。

「やっぱりお前大丈夫じゃなかったんだな...!!」

 気づけなかったことを悔やむミディ。

「バレたら心配しちゃうかと思って...」

「当たり前だろ!!頼むから隠すのはやめてくれ...」

 ナハトはミディに対して隠し事が多い。ナハトにとっては耳の痛い話であった。ミディはなんとかナハトを担ぎ、医療班の元へ向かう。

「ここは手一杯だ。そいつなら死なないから先に帰還しててくれ」

「え...」

 被害が予想以上に大きかったようでナハトの治療に回す人員がいないようだった。絶望するミディ。担いでいるナハトの息遣いが荒くなる。苦しそうだ。早くしなければ。ミディはナハトを担いだまま本部へ向かおうとする。慌てて止めるナハト。

「無茶だよ...それに俺重いでしょ。ミディの体力が持たないよ」

 ナハトは長身のため小柄なミディが彼を担ぐのは無理があった。だがミディは諦めない。

「絶対諦めるもんか...!!ナハトは何度も俺を助けてくれた!今度は俺が助ける番だ!」

 ゆっくりだが確実に一歩一歩進んでいく。途方も無い時間をかけ、ようやく本部へ到着した。

「やっと...ついた...」

 その瞬間気が抜けたのか倒れてしまうミディ。ナハトももう意識はない。本部の前で二人して意識を失ってしまう。外から慌ただしく人がやってくるように見えたがよく分からないまま意識が落ちていった。


「う...あれ?俺...」

 ベッドの上で目覚める。ここは病室のようだ。ナハトを運んだあと倒れてしまったらしい。疲労によるものだ。

「そうだナハトは!?」

 周りを見渡すと隣のベッドのカーテンに人影が見える。ミディは慌てていたのか躊躇いもなくカーテンを開けた。

「やっほやっほ」

 右手を上げ軽快な声で挨拶するナハトがいた。元気そうに見えるが左手にはギプス、全身に包帯が巻かれていて重傷なのが一目見て分かる。

「ナハト!!大丈夫...じゃなさそうだな...ごめん俺のせいで」

「なんで?最後のグラミ倒したのはミディでしょ?それに俺をここまで運んでくれたし。助けてくれてありがとう」

「ナハト〜〜〜〜〜〜」

「泣くな泣くな」

 ミディの頭を撫でるナハト。二人の絆は更に深まっていく。

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