第5話 孤独

 二人はレントゥスの食堂で一息ついていた。

「他の怪我は治らないんだな」

 ナハトは体のあちこちに痛々しく包帯やガーゼをつけていた。

「治癒力は人並みだからね。欠損だけくっつくの早いけど」

「そうか...くっついて本当に良かったよ...」

 するとレントゥスの隊員達が通りかかる。

「お、ナハトだ!また手ひどくやられてんなあ!」

「お前はそれしか脳ないんだからもっと頑張れよな」

「新人のお守りしてるんだって?お前にお似合いだな」

 ナハトは完全に無視を決め込む。ミディはどうしていいのか分からずあたふたしている。すると突然隊員の一人がナハトの胸ぐらを掴む。

「聞こえてんだろ。無視してるんじゃねえよ」

「あ〜いたんだ。存在感薄すぎて気づかなかったわ」

 隊員がナハトを殴る。血を吐きながら笑うナハト。

「あ〜手出したね。はい規則違反〜」

 隊員同士の争いは禁止されている。バツが悪そうに隊員たちは逃げるように去って行った。

「ナハト大丈夫か!?」

「へーきへーき。ほんと喧嘩っ早いよねうちの隊員は」

「なんだあれ...いつもあんな感じなのか?」

 ミディの言葉に怒気がこもる。

「いつもあんな感じだから気にしなくていいよ。俺のために怒る必要もない」

「なんで...ナハトはいつも頑張ってるのにこんな酷い扱いなんだ...」

「俺が死なないからかな」

「え...?」

 「みんなの態度で分かったでしょ。俺は捨て駒なの。ボスもそれが分かってて君のお世話係にしたんだよ。俺がどうなっても知らないけどミディだけは守れるようにね」

 ナハトは死なないため常に最前線で危険な任務をこなしてきた。時には不死身なのを前提に常人には耐えられないようなことも命令されてきたらしい。仲間たちからは死なないことを不気味がられ、捨て駒扱いされ、軽んじられている。

「そんな...」

「俺はナハトが捨て駒だなんて思わないぞ!!たとえ不死身でも怪我してほしくない...」

「ありがとう。心配してくれるのはミディだけだよ。俺はそれだけで幸せだから」

 悲しそうに笑うナハト。ミディはナハトの孤独を知った。自分だけは彼に寄り添おう。そう強く思った。

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