第2話 レントゥス

眼帯の男に案内されてレントゥスの本部へと足を踏み入れるミディ。

「そういえば名前聞いてなかった。俺はミディ。あんたは?」

「ナハト」

「そうか。ナハト、改めて助けてくれてありがとう」

「いいよ。律儀だね君」



 扉を開けるとそこには若い銀髪の男がいた。傍らには軍服を着た強面の男が控えている。その圧のせいかミディは緊張している。

「待ってたよナハト。それにミディ」

「何で俺の名前を...?」

「ずっと見ていたからね」

「まずは自己紹介だ。僕はアーディ。ここの所長だよ〜ボスって呼んでね。かっこいいでしょ」

「あんたがトップ...?えっ!?」

 ミディが驚くのも無理はない。アーディはミディと年がそう離れていないように見える。

「まだまだ若造だけどなんとかみんなのおかげで頑張ってるよ」

ミディの心を見透かしたように語るアーディ。ミディは直感的なこの人はただものではないと感じた。

「一人で暗躍するのが好きなくせに何言ってんだか。俺はもう用済みだよね。帰る」

 踵を返すナハト。

「あ〜〜ナハトもいてくれる?君にも聞いてほしい話だからね」

「だっる」

 ボスに対する態度ではないような気もするが、ナハトも一緒にいてくれるようだ。それだけで心強い。

「さて!本題に入ろうか!ミディ、君うちに入りなよ」

「...へ?」

 急展開。あまりに唐突な勧誘にミディは動揺を隠せない。

「君の魔力量は素晴らしい!ぜひうちでその力を存分に発揮してもらいたいんだ」

「えっと...でも俺だめなやつで...世界を守るとかそういう大層な覚悟持ってないというか...力も制御できないし...」

「大丈夫!そこのナハトは金のために働いてるぐらいだし。実力と覚悟は後からついてくるものだよ。こちらでもサポートするから考えてはくれないかな?」

「やめときなよ」

 横から口を挟むナハト。

「どれだけの人々がグラミの犠牲になってるか知らないわけないよね。最前線で戦うレントゥスの人は特に死にやすい。君は死に急いでるの?」

 思案するミディ。ナハトの言っていることは正しい。自分が生き残れる可能性は限りなく低いだろう。だがこれはまたとない大チャンスだ。自分の力が人の役に立てるかもしれない。そして力を制御できるようになるかもしれない。

「...俺で良ければやります」

「話聞いてた?」

 呆れるナハト。

「心配して止めてくれたんだよな。ありがとうナハト。でも俺はずっと周りに迷惑をかけてきたんだ。だからこそこの力で人を助けられるのなら俺はそうしたい」

「あっそ。泣き言言っても助けてあげないからね」

「歓迎するよミディ!じゃあ手続きとかやっちゃうね」

 それからは家族に了承を取ったり、手続きや身体能力の測定、隊服の採寸など忙しかった。何よりミディが悲しかったのは家族にいらないもの扱いされてしまったことだ。事情を伝えるとやっと出て言ってくれるのか、もう帰って来るなと言われてしまった。確かに家族には迷惑をかけてきたがここまで言われると思わずに涙ぐんでしまうミディ。それを慰める者は誰もいなかった。ミディは組織備え付けの寮で眠りについた。


 その頃、所長室にて。

「ほんと性格悪いよね。アイツのこと道具としか思ってないんでしょ」

「そんなことないよ〜ミディが入ってくれてうれしいよ僕は」

「はっ。アイツを餌にするつもりのくせに何言ってるわけ?」

「餌?何のことかな?」

「とぼけなくていいから。アイツの魔力量は規格外だ。それを利用してキューブの場所を誘導できないかと思ってるんでしょ?」

「わ〜お大正解。やっぱりナハトは優秀だねえ」

 ナハトは抜剣しアーディの首元に刃を突きつける。それと同時に軍服の男がナハトの腕を掴む。

「2人共ステイステイ。喧嘩はだめだよ〜」

「誰のせいだと思ってんのマジで」

「まあまあ。ボスに刃向けるとか処刑ものだからね。許してあげる寛大な僕に泣いて感謝してくれてもいいんだよ?」

「いちいちムカつくなあ」

「そこまで言うんだったら君が彼を守ってあげればいいんじゃない?」

「何で俺が」

「これは所長命令だよ。ミディのお世話係よろしくね〜〜」

「は?」

 所長室を出てため息をつくナハト。

「なんでこんなめんどくさいことになったんだ...」

 ミディとかいう奴のせいで酷い目に遭った。命令には従わざるを得ないが優しくしてやるつもりはない。そう思い寝床へ向かった。

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