私の実家 番外編 私の通学路
私の通学路には一つ大きな川が流れていた。
町の中では大きいが…
他所から見れば大きいと言うには小さい川だった。
そこには、上流付近から下流まで何ヶ所か橋が架かっており、
その一つの橋は、私の通学路になっていた。
その日は、冬の寒い時期だった。
暗くなるのが早く私が学校から最寄り駅についた頃にはあたりが真っ暗になっており、
降りる人もまばらだった。
私は急いで自転車に乗り、帰路を急いだ。
なぜこんなに急いでいるかというと
今朝。バタバタと学校へ行く準備をしてでていこうとしている私に
「今日の夜。ハンバーグだから。」
と言って送り出してくれたからだ。
早く早く帰ってハンバーグにありつきたい。
今日のハンバーグはでかいかな〜
など心躍らせ自転車を漕ぐ速度も速くなる。
気づくといつの間にか橋に到着していた。
街灯もない田舎の橋。
自転車の電気が頼りだった。
私はふと橋の名前が書いてある柱に目が向かった。
その柱の隣に不自然な隙間を見つけた。
柱の隣には川にそうように転落防止のガードレールがあるはずだった。
なのに何故か人ひとり入れるほどの…
そこまで考えたあたりで自転車はゆっくりとそのすきまに向かって進んでいた。
初め何が起こったのかわからず足をついて止めようとしたり、ブレーキをかけて止まろうとしたが、
ズルズルと引き寄せられるように柱との隙間に近づいていく。
私と隙間の距離はあと僅か。
その時に私の頭にある言葉が浮かびました。
「母。お手製。ハンバーグ。」
まて。ここで死んだら…食えんやん。
母ちゃんのハンバーグ。
幽霊か妖怪かなんか知らないけど
人の楽しみを奪った挙句に命も奪って。
私の命奪ったからってどうせ一瞬喜んで次狙うんやろ?
はぁ?ふざけるなよ。
奪われ損やん。私に何のメリットもない。
何ならハンバーグも食べれない。
死んだら何も食べれない。
私にメリットがあるんだとしたら
私を引きずり込んだあと私が幽霊になって
お前が成仏するまでたこなg……
私はぎゅっとブレーキを握り直し、
「おまんさぁ。わかっちょいな?ここでおいどんな川に引きずり込んだぎーな。わかっちょいやんせな?母さんどんが作いやったハンバーグ食えんかったひーな。あたいなおまんさぁを探し出してうったくっでね?よかやいな?」
私は、何故か頭に浮かんだお国言葉を永遠ととなえづづけました。
ピタっと止まった下を見るとすぐ真下は川でした。
私は一瞬怖さを忘れ、真下へ舌打ちをしたあと
そそくさとその川を渡り切りました。
今思えば、
何故あんなに母お手製のハンバーグに固執していたのかわかりません。
私は無事家に帰ることができ、ハンバーグも食べることができました。
本当に手のひらサイズか?ってくらい厚みのあるハンバーグと母特製のソース。
箸で割ると肉汁が流れ…
もったいないもったいないと思いながらソースと混ぜ、ハンバーグにまとわりつかせてからご飯にワンバウンド。
からのほうばる。
幸せでした。
むっちゃ美味しかったです。
ですが、頭の片隅にはあの記憶が残っていました。
明日の朝。確認してみよう。
私は、朝。
いつも通り家をでました。
自転車で同じ橋についたあと、
ゆっくりと昨日引きずり込まれそうになった
柱とガードレールを確認しました。
私は、何度も見返しました。
柱とガードレールは隙間がないほど近くにありました。
昨日の隙間は全くと言っていいほどありませんでした。
その後、私は何度も確認しました。
あれ以来。
柱とガードレールの隙間が開くことはありませんでした。
おわり。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます