価値の形
ある日、流れ着いた小さなカケラを飲み込んだ魚。そりを釣り上げたるは暇な時を潰す三人の人間だった。他の衝撃で忘れ去られた魚は適当に売られ、食用とは全く別の、遠くかけ慣れた存在へ渡った。
「焦がした魚を私に?」
「じいじが焼きすぎちゃって、供養してくれぇってねぇ」
なんと適当な処理を望む狂人か、既存の作品に骨粉を加えるなど正気の沙汰ではない。しかし、普段から支援されている身でいいえと否定することは失礼に当たると思ったのか、袋に封じられた焦げ魚を受け取った。
「こっちで処分しときますよ。奥さん」
きっと、この人間は自分の過ちを隠したいだけなのだ。それとも、ほんとうに好好爺が七輪で焼いたというのか?腐ったような腹のでっぷり膨らんだ醜い魚を。
処分すると言っても食べる部分が不完全に乗ってしまっていると匂いが移る。そのためガスバーナーで完全に燃やし尽くした。白い骨だけになった魚は腹の部分に異物を抱え込んでいたようだが、土器のカケラらしくそれも砕いて粘土に加えた。
もう残り僅かな粘土はちっともカサ増しされず、がっくり擬音を口にする。手の施しようがないため、そのまま作品を作りあげり。
「なんでこうゆう時に限って上手く出来るかな……」
叩き割りたくなるのを堪えて丁寧に模様を書き上げていく。
それも上手くいった。
「まぁ、そんな日もある。焼き上げよう」
ほんの少し、魅力的な紋様をかけたことに満足しつつ、多種多様な作品が今か今かと焼き上がりを待つ釜に丁寧に置いた。何日もかかったのち、この作品は爺によって買い上げられ鐚一文のような値段で売られていくのである。腕のない芸術家は設備だけは壮大な環境にため息をついた。
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