第2話 美術展

「ありがとー!いってくるね!」

送ってくれた隊員に礼を言い、美術館前に向かう。

まだ残暑が残るこの時期には、木立に囲まれたこの場所は非常に有難い。

「この辺りは別段特に異常はないんだよなぁ...」

タバコに火をつけ煙をくゆらせていると、前方から人が走ってきた。

「すみません。こちらの敷地内は禁煙となっておりまして」

申し訳なさそうに言う男性の胸には美術館のロゴと館長と記された名札。

「あああごめんなさい!知らなくて!」

慌てて煙草を消して懐にしまい込んで謝り倒す。

初手からやらかすなんて最悪だ。

「いえいえ。知らない人も多いですから。昔ここでボヤ騒ぎがあったもので、その為監視カメラをつけているんですよ。」

「なるほど...知らなかったとはいえ大変失礼致しました。えっと...美術館の館長さんでいらっしゃいますか?」

「そうですが...」

「申し遅れました。警視庁から参りました担当の者です。」

最初は不思議そうな顔をしていたのだが、外部用IDを見せると途端に居住まいを正して頭を下げる。

「失礼致しました。館長の只野でございます。この度は御足労いただきありがとうございます。」

「いえいえこれが仕事なので…」

慌ててボクも頭を下げる。

「ところで問題の絵はどちらになりますか?早速向かいたいのですが。」

「はい。絵の方は特別展示室にございます。何かあってはと思い今は誰も入れないようにしております。只今ご案内致しますね。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る