第1話 展覧会の絵

ボクが隊長室に呼ばれたのは、当直明けの次の日のことだった。

「絵が動く?」

「そう。」

「イマドキ絵が動くのなんか珍しくないんじゃないの?」

科学技術も進歩した今じゃ小細工なんていくらでもできる。

よくあるイタズラではないかと一蹴しようとしたら

「それがね…その絵があるのは学生国際美術展の展覧会場なのよ」

美術展。

さすがのボクでも小細工などできないのはわかる。

「問題のある絵は大賞作品。描いた人は全く心当たりがないと言っているわ。情報では問題無く白。問題の事象は警備員含め何人か目撃例があり。今はネットの統制や施設設備に不備があり直るまで休館扱いにしているけど…早く収束させなければ騒ぎになりかねない。」

確かに古今東西そういった話はあるし、話題にはなるもんな…

「というわけで本日より美術館への出張、よろしくね。」

「え…ええええ?!」

「大丈夫。表向きは施設不備で休館だけど、冷暖房はバッチリ効くから。コンセントの使用許可も出たわよ。」

「それでも…」

「ちゃんと寝袋とエアベットも用意したし、出張中は全日出勤扱い。」

「うぅ…」

「貴女にしかできない事だからお願いしたのだけど…」

「わかった!分かりましたよ行ってきます!ついでに館内で煙草は…」

「…いってらっしゃい。気をつけてね?」

「ですよねぇぇ行ってきます!」

危ない危ない。隊長の目が笑ってなかった。これは説教される前にとっとと行かないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る