第9話 仕方ないのでいったんフルチンになる

 小さな女性用下着の中で勃起してしまったことにより、アタシの玉は圧迫死寸前だった。これを解放するべく、山田が提案したこととは。


「フルチンになるしかない!」

 大真面目に言い放った。上半身ブラジャーのみの金髪美少女がだ。そんな煽情せんじょう的な姿を見ると、アタシはますます硬くなってしまう。


「な、何言ってんのよ仮にも女子に向かって!」

「安心しろ。脱ぐのは下だけでいい」

「何が安心なのよ」

 こんな子の前で下半身丸出しになるのは抵抗があった。渋るアタシに山田は言い聞かせる。


「そうは言うけどな、実際悪影響が出たらまずいだろ。保健で習っただろ? 精巣を傷めたら、最悪精子がつくられなくなるかもしれない」

「せ……! で、でもアタシ女だし」

「いつ戻るかなんて分かんねえだろ。それに、お前が苦しそうにしてんの見てらんねえよ」

「う……」

 山田の真剣な眼差しに、アタシは思わず言葉に詰まってしまう。何も言えなくなるアタシを見て、山田は床にひざまずいた。


「お前がやらないならオレがやるぞ」

 アタシのズボンのベルトをカチャカチャやり出した。


「ちょ、ちょっと! なに勝手に下ろそうとしてんのよ!」

「でも痛いんだろ? 待ってろ、いま楽にしてやるから」

 ベルトを外して社会の窓に手をかけた。アタシは慌てて待ったをかける。


「待って! も、もしかしたら、パンツからはみ出ちゃってるかも!」

 もしそうだった場合、ズボンを下ろすと同時に見られてしまうことになる。アタシは顔を赤くしたが、山田は平然としていた。


「別にいいよ、男同士みてえなもんだし」

「今は女の子でしょうが!」

 こんな美少女に見せつけたら犯罪だよ。それにアタシだって見たくないし。


「とにかく目つむって! アタシもつむるから!」

「めんどくせえなあ。まあ、それでお前の気が済むんなら」

 山田は素直に目を閉じた。それを確認してアタシも閉じる。


「と、閉じたよ」

「ん。じゃあ下ろすぞ」

 山田が手探りでチャックを開けようとするのがわかる。アイツの手が布越しに当たっているのがビンビン伝わってきた。


 こ、これどういう状況? なんでアタシ幼馴染にズボン下ろされてるの? 普通に恥ずかしすぎるんですけど。


「うっ」

 目を閉じているから、衣擦れの音とか余計意識してしまう。ズボンが床に着く音がした。


「よし。じゃあパンツ下ろすぞ」

「う、うん……」

 体は男でもパンツは自分のものだ。アタシのパンツを彼がその手で脱がそうとしているのだと思うと、何だかいけないことをしている気分になってしまう。


「ちゃ、ちゃんと目つむってるよね?」

「当たり前だろ。お前のパンツなんか興味ねえっての」

 そう言う山田の声は、後半部分が少し上擦うわずったように聞こえた。緊張してるのかな。なんでだろう。別にアタシのパンツなんてどうでもいいはずなのに。


「くそ。目閉じてるからやりづれぇな」

 約束通り目は開けていないようだ。彼の不器用な手つきをパンツ越しに感じた。


 中で棒が引っかかっているようだった。パンツを下ろそうと動かすたびに、チリッと擦れてしまう。アタシは小さく声を漏らしてしまった。


「んっ!」

「わ、わりぃ! 痛かったか?」

「い、いや……。痛くは……」

「え?」

「な、何でもないっ!」

 これ以上もてあそばれたらどうにかなってしまいそうだった。中途半端に擦れてしまうのは危険だ。恥ずかしいけど、一気に下ろしてもらうしかない。


「あの、無理矢理下げちゃっていいよ? 膨らんでてやりにくいでしょ?」

「す、すまねえ。じゃあ、せーので行くぞ?」

 パンツの両端を持つと、山田はタイミングを教えるため口を開いた。彼の息づかいまでもが直接当たってくるように感じられた。


「せーのっ!」

 一気にパンツを下げた。布で擦れて、アタシはまた小さくうめいてしまう。パンツに引っかかっていた硬い棒が、反動で勢いよく跳ね上がった。


 バツンッ!


「!」

 その瞬間、先っぽに何かがかすめる感触がした。それと同時に、山田のかわいらしい悲鳴が聞こえてきた。


「うわっ⁉」

「ど、どうしたの⁉ 大丈夫⁉」

 お互い目をつむっているから何もわからない。山田は少し遅れて答えた。


「な、何でもない。ちょっと鼻先をかすめただけだ」

 さっきかすったのは山田の鼻だったようだ。あんな美少女の顔を汚してしまったのだと思うと……。


「……」

 い、いかん。背徳のよろこびがこみ上げてくる。ますます元気になってしまうアタシの棒。真っ暗闇でも感覚でわかってしまった。


 ダメダメ! 女子高生の顔に押しつけて興奮するなんてサイテーです。いや押しつけてないけど。欲情を理性で抑えつけて、アタシは山田に謝った。


「ご、ごめんね? なんか元気すぎちゃって。わざとじゃないの」

「平気だ、かすっただけだし。あんま気に病むなよ」

 パンツを床まで下げると、彼は足を上げるように指示した。


「ちょっと持っててくれ」

 足から外したパンツを、アタシの手に握らせる。そしてズボンを上げ始めた。


「ズボン穿いていいの?」

「ああ。きついパンツが取れれば圧迫されることもないからな」

 それもそうか。助かった、ずっとフルチン状態かと思ったよ。


 アタシの棒をチャックにはさめないよう、彼はずいぶん苦労しているようだった。も、申し訳ない。改めて美少女になんてことをさせているのかアタシは。さすがに罪悪感で小さくなってきた。


「……よし、なんとか収まったぞ」

 山田の言葉に目を開くと、彼はまだ目を閉じていた。本当につむっててくれたんだ。彼の誠実さが伝わってくるようだった。


「ほ、本当にありがとうございました……。もう開けていいよ?」

「おう。あ」

 目を開けると、山田は自分の姿に目を落とした。上はブラジャー1枚だった。


「そ、そうだった!」

 もの凄い速さでシャツと学ランに身を包んだ。その慌てっぷりがおかしくて、悪いとは思ったがアタシは笑ってしまった。


「あーあもったいない。もうちょっと見たかったのに」

「ば、バカなこと言うなっ! だいたいお前なあ、人の体見て欲情してんじゃねえよ!」

「へ、ヘンな言い方しないでよ! アンタじゃなくて山田さんに興奮しただけです~っ!」

「それはそれでどうなんだよ、今日会ったばっかのやつに興奮しやがって」

 そう言われると、アタシなんであんなにドキドキしちゃんたんだろう。いくら山田がかわいくて綺麗でも、初対面の子に夢中になるなんて……。


「う~ん……???」

 考えたけどよくわからないや。山田が超絶美少女なせいだよ。ほかにドキドキする理由がない!


「逆にアンタは興奮しないの? 山田さんの体にさ」

 そっちの方が異常だと思うのだが、ヤツは平然と答えた。


「別にしねえ」

「うそだ~。からかわないから正直に言いなよ」

「だからしねえって普通に。だってさ――」

 彼はなぜ山田のおっぱいを見たり揉みしだいたりしないのか。やけに気になってアタシは、気づくと彼の言葉に真剣に耳を傾けていた。

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