第8話 怪奇! 妖怪お尻ツンツン

 山田のおっぱいをきちんとカップに収めるため、アタシは後ろから手を伸ばした。山田は依然として目隠し状態だ。これからおっぱいを触られるとあって、乙女のように緊張していた。


「お、お手柔らかに……」

「そ、そんなかしこまられると、アタシまで緊張してくるんですけど……」

 こ、これは変なプレイじゃないから! 全ては山田のおっぱいのため。ただのフィッティングですよ!


「ご、ごめんね? 失礼しまーす……」

 山田の右乳に手を滑り込ませた。ほっ、ほわああ~っ! 何じゃこの吸いつくようなふにふに感はー! ほどよい弾力、ハリのあるお肌。大きさは控えめながらも、冴えない男子高校生を打ちのめすには十分過ぎる破壊力だった。


「や、ヤバい……」

 油断したらまた鼻血出そう。もっ、もちつけーアタシ。この体勢で鼻血なんて出したら、山田の金髪が紅に染まってしまうぞ。こんな綺麗な子を汚しちゃいかん!


「ど、どうした? なんかトラブルか?」

「だ、大丈夫。この程度のTo LOVEる、乗り越えてみせるよ」

 とにかく、鼻血を回避するためには絶対に乳首を触っちゃダメだ。乳首は一発アウト。このチェリーボーイな体には耐えられないよ。


 脇のお肉を収める感じで、指先の神経を集中させるのだ。い、いかん。集中したらよりおっぱいを鋭敏に感じてしまうというジレンマ。しかしテキトーにいじったらうっかり乳首に触れかねない。何という二律背反。もはやこのおっぱいは凶器に等しい。


 こうなったらできるだけ体を密着させて、至近距離で爆弾処理に挑むしかないよ。アタシは山田に覆いかぶさる格好で、横乳をプニプニもてあそんでいった。


「はあ、はあ……!」

「お、おい。なんか近くねえか?」

「仕方ないでしょ、こうしなきゃ爆発する」

「爆発⁉ む、胸がか⁉」

「それだけデリケートって意味。もうちょっとだから」

 作業は既に左乳へと移っていた。右乳左乳交互に見て~、頭がおかしくなってくるよ。なんか体まで熱くなってくるな。


「?」

 なぜだろう。両手使ってるのに、山田のお尻に触れてる感じがする。プリッとした柔らかい感触が伝わってきた。不思議に思ったのは山田も同じようだった。


「なあ、さっきから尻に何か当たってる気がするんだが」

「でもアタシ両手使ってるし。気のせいでしょ」

「そうか。それにしちゃ、やけにはっきりした硬い感触なんだが……?」

 妙なこともあるもんだね。怪奇現象かな? 早いとこ終わらせてしまおう。


「よし、収まったよ」

 後はストラップの長さを調節して。仕上げに背中のアンダーベルトを少し下げる。山田の目隠しタオルを外してやった。


「お、おい、それはまだしてていいだろ」

「あ、ごめん流れで取っちゃった。まあいいでしょ乳首とかは見えないんだし」

 山田はいそいそとシャツを手に取った。このおっぱいも見納めかと思うと胸が切なくなるね。せめて網膜に焼きつけておこう。


「が、ガン見するなよ!」

「え? いやいやちゃんとつけられたかなーって。どう? 変な感じしない?」

 山田は軽く上体を動かしてからうなずいた。今度は違和感なくつけられたようだ。


「何というか、一体感あるな。こすれる感じとかもない」

 それはよかった。失血死しかけた甲斐があったよ。


「けど、ちょっと窮屈だな。サイズ合ってるのか?」

 どういう意味かな? アタシのブラは窮屈だとおっしゃる。それが意味することとは……。考えるのはよそう。いたずらに自分を傷つけることはない。


 シャツを着る前に、山田はアタシの方を見て礼を言った。


「ありがとな。勝手が分からなかったから助かったぜ」

「どういたしまして。アタシもけっこう楽しかったよ」

「ははっ、何だよそれ。お前どうかしてん――」

 そこまで言いかけて、山田ははたと手を止めた。シャツを着るのも忘れて、アタシのある一点を見つめていた。


「お、おい……。お前……!」

 なぜか顔を赤くして震え出した。アタシは意味がわからず首を傾げた。


「?」

 どうしたというのだろう。とりあえず山田の視線を追ってみる。どうやらアタシの下半身を見ているようだ。


 失礼しちゃうわね、レディーのお股を凝視するなんて。あ、今は男か。アタシは自分の体に何気なく目を落とす。股間の部分を見て驚愕した。


「げっ⁉」

 ズボンを突き破らんかのごとく怒張していた。内側からもっこりと盛り上がっている。ビンビンに屹立していた。


「なっ、何これ⁉ 股間が! 股間がー!」

「こっ、股間股間言うな!」

「アンタも言ってんじゃないの!」

「これはノーカンだろ!」

 何度も言っていたら余計意識してしまった。直接触らなくてもわかる、熱い! 硬い! パンパンに膨れ上がっていた。


 さっき山田のお尻に当たってのはこいつだったのか。そうとも知らずずいぶんツンツンしてしまった。なるほど、おっぱいやお尻に反応してこんな風に……。って感心してる場合じゃない。


「ど、どうしようこれ! どうやったら治まるの~⁉」

「お、落ち着け! こっち来んな!」

 自分の体なのに対処法がわからない。まるで別の意志を持った悲しいモンスターのようだ。この暴れん棒を鎮めるには……。


「そ、そうだ!」

 素数を数えるといいって何かで読んだな。まさか自分が実践することになるとは。2、3、5、7、11、13、15、17……。15?


「全然治まんないよ~! た、助けて~っ!」

「だ、大丈夫だ! 別に死にゃしねえって!」

 そうは言われても、気になるよ存在が。ズボン張っちゃって恥ずかしい……。でも手で押さえるのも嫌だしなあ、なんて考えていると。


「っ⁉」

 な、なんだ? なんか、が痛い……。ぶっちゃけ金玉ね。苦痛に顔をゆがめていると、山田が心配そうに覗き込んできた。


「どうした? どっか痛むのか?」

「な、なんか……。ボールが……」

「ボール? あ」

 何かに思い当たったらしい。山田はちょっともじもじしながら尋ねた。


「お前もしかして……。お、女物のパンツ穿いてる?」

「はあ? こんなときにセクハラすんな!」

「ち、ちげえよ! たぶんさあ……」

 アタシの股間をチラッと見て言った。


「その、中で引っかかってんだと思う。えっと……」

 山田は言い淀んだが、アタシにもなんとなくわかってきた。棒がパンツを引っ張っているせいで、その分玉が圧迫されてしまっているのだ。小さい女性用下着とのミスマッチだった。


「い、言われてみればそんな感覚……」

 パンツの中は乗車率200%を超えていた。棒が幅を利かせているせいで、玉がパンツに押しつけられてしまっている。このままでは……。


「つ、潰れちゃう~っ……!」

 こんな形で女に戻るのはごめんだった。ていうか絶対死んじゃう。サドルにぶつけただけでもあんな痛かったのに、耐えられっこないよ!


「ど、どうしよ山田! このままじゃ死んじゃう!」

「山田じゃねえよ! そうだなあ……」

 要は圧迫から解放されればいい。満員状態だというのなら、ドアも壁も取っ払ってしまえばいいのだ。


 おそらくそう考えたのだろう。山田は綺麗な顔を上げてこう言った。


「よし。パンツ脱いでフルチンになれ!」

「え……。ええ~っ⁉」

 今度はアタシが美少女にセクハラされる番だった。

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