第14話 リュカ、マサシを羨む
例の豪雨から一週間。
鍛錬を続けたマサシはメキメキと魔術の腕を上げ、人族としてはそこそこやるレベルにまで成長していた。
あくまでも『人族としては』だが。
マサシ・サワタリ
性別:男
年齢:二十八歳
職業:エルフの保護者
LV:14
HP:182 MP:140
力:62 魔:48 賢:40 速:22 器:38 運:28
スキル:マサシ流剣術LV2 マサシ流剣技
水属性魔術LV1 風属性魔術LV1 火属性魔術LV1 地属性魔術LV1
エルフ語
加護:ゲーム的な色々
呪詛:フラグリバーサル
=========================
特性:巻き込まれ体質 ラノベ主人公
四属性コンプ。これは通常の人族では成しえない事であった。
しかし師匠であるリュカはエルフであり、人族の事情を知らないため特におかしな事だとは気づいていないし、マサシは異世界人であるため、習って練習したので出来るようになったくらいにしか思っていない。
通常の人族は精霊との親和性が低いため、習得できたとしても1種、頑張って2種の精霊と
そんな事を知る由もない二人はただただ『これでお揃いだね』と、無邪気に喜んでいた。
そんなマサシはステータスを見て気づくことがあった。
「なんかレベル10を超えてから伸びが凄い……」
マメなところがあるマサシは、ステータスをチェックして変化があれば必ずノートにつけていた。
「ええと、レベル1の時との差は……と」
力:12 魔:8 賢:15 速:5 器:8 運:20
力:62 魔:48 賢:40 速:22 器:38 運:28
「すげえ……ちょびちょびと上がるなあと思ってたけど、力と魔力の伸びが半端ないな。器用さも地味に伸びてるし、これは今後のレベリングに期待が持てるのでは」
そしてふと気になってリュカのステータスの控えも見てみると……。
力:62 魔:128 賢:92 速:68 器:100 運:10
「いかん、リュカ師匠に力が追いついてしまった! バレたら何を言われることか!」
しかし、時すでに遅し。背後に立つリュカはしっかりとその全てを眺めていた。
「……マサシも立派になったものだね……それに比べて僕は……」
「ゲェ! リュカ!」
ここまで早くマサシがすくすくと育っているのは女神から貰った『ゲーム的な色々』の効果が大きい。
最も、あくまでもマサシが頑張った結果が返ってきた結果がもたらした成長なので、別にマサシがズルをしているというわけではないのだが、リュカからしたらたまったものではなかった。
「むー! ずるいずるい! マサシだけ急成長してずるい!」
「そんな事を言われても……こればっかしは……」
「そうだ! 僕もたくさん魔物を倒せば成長するかも知れないね! 今まで殆ど狩りにでかけてないしさ、ね、マサシ! 狩りに行こうよ!」
「えぇ……だから俺のは加護の関係で……」
こうしてマサシはリュカを伴って三日連続の狩りに出かける羽目になったわけだが……。
3日後―
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リュッカ・ルン・シルフェン
性別:▓▓▓▓▓▓
種族:エルフ
年齢:百十二歳
職業:▓▓▓▓▓▓
LV:33
HP:260 MP:512
力:72 魔:148 賢:98 速:72 器:105 運:11
スキル:水属性魔術LV5 風属性魔術LV5 火属性魔術LV2 地属性魔術LV2
弓術LV2 鑑定LV2 解体LV3 エルフ語 マルリール公用語
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マサシ・サワタリ
性別:男
年齢:二十八歳
職業:エルフの保護者
LV:16
HP:203 MP:168
力:68 魔:52 賢:48 速:28 器:42 運:28
スキル:マサシ流剣術LV2 マサシ流剣技
水属性魔術LV1 風属性魔術LV1 火属性魔術LV1 地属性魔術LV1
エルフ語
加護:ゲーム的な色々
呪詛:フラグリバーサル
=========================
特性:巻き込まれ体質 ラノベ主人公
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「リュカのレベルが上がっている……だと……?」
「やったあ!!!!」
マサシは驚いていた。さりげに芽生えていた『解体』に気付くこと無く、明らかに上がっているリュカのレベルに驚愕した。
レベルアップは自分だけの特典ではなかったのか? これは世界のバグなのではなかろうか?
運営が不利になる面白バグは黙っておこう派のマサシだが、流石にこれには頭を抱えた。そしてたまらず天に祈りを捧げてしまう。
(女神様女神様! これは一体どういうことでしょう! なぜリュカのレベルが、パラメーターが上がっているのでしょうか!? 日々の努力や経験によって上がったという感じじゃないです! どう考えても経験値の取得によってレベルが上がったようにしか思えません! 何故ですか! バグですか!)
するとどうだろう。マサシのもとに女神の天啓が下ったのだ。
《雅士くん、慌てないで。これはバグじゃないの。多分仕様よ。ほら、ゲームを元にして作った感じじゃない? 今ってリュカちゃんと雅士くんは言わばパーティを組んでいる状態なのね、すると戦闘で得た経験値は分配されるのよ。
うーん、ざっくりいうと、雅士くんの仲間にもゲーム的なアレのスキルが適応される感じ? だからお友達はよく選んでね? 変な人達が英雄みたいに強くなったら嫌でしょう?
……あ、はーい。ごめんね、雅士くん。ママがご飯だって。じゃ、また電話するね! あ、そうそうリュカちゃんね、ちょっとアレなんだけど、今のところはアレだから二人の様子は美味しくいただける感じでデュフフ……もう、今行くってばー! ごめん! マジでママキレてるからあとでねー》
「……」
「……ど、どうしたの? マサシ?」
「……俺の疑問に対して女神から返事が来た……」
「ええ!? か、神様から?」
「それはまあどうでもいいんだが、『友達以上恋人未満』みたいな変な小芝居とかリュカと俺のこととかそっちに全部持ってかれて……なんというか……くそが!!」
「ちょ、マサシ! 一体何を言われたの! マサシ? 落ち着いて! ねえ!」
マサシが心を落ち着けるのに8分かかった。
リュカが入れてくれたハーブティーを飲み、何とか平静を取り戻したマサシは女神の言葉の中から『まともな』部分だけを抜粋し、リュカに伝えた。
「つまり、マサシと一緒に戦えば強くなれるってこと?」
「まあそうなんだが、厳密には違うな。仲間として一緒に行動すれば……あー、良い教材があるじゃんか」
押入れの収納から古いゲームソフトと、それを動かす某レトロハード互換機を取り出してテレビに繋ぐ。電気は使えても流石に電波はダメだったので今まで付けようとも思わなかったが、繋げるだけのゲームならば出来るのだ。
テレビのスイッチを入れ、某ドラゴン探索Ⅲを立ち上げるとリュカが驚きの声を上げる。
「わ! 今までこれなんだろうと思ってたけど……いや、なにこれ?」
「これはテレビと言って、音と共に動く絵を見るような道具だな。そしてテレビに繋げたこの機械を使うことによって……ほら、やってみろ」
リュカにコントローラーを手渡し、簡単な操作を教える。ある程度操作を覚えたらほっとけば適当に遊んでパーティーやレベル、ステータスの概念を覚えるだろう、そう思ったのだが甘かった。
「なるほど、操作はわかったけど……文字だよねこれ? 読めないよ」
「そうだったー!」
マサシはスキルのおかげで言語の問題を解決したが、リュカには日本語が読めるわけがなかった。
そしてこういう非戦闘時での行動に関しては『経験値』が発生しないため、マサシの恩恵のおすそ分けが発生せず、ゲームシステム的なアレでスキルを簡単に得られるという事はないのだ。
リュカが自力で日本語を覚えれば、ステータスに『日本語』と記載されるのだろうが、それとこれとはわけが違う。
じゃあ、この話は無かったことに……というわけには行かず、コントローラーを握りしめ何かを訴えるリュカのために横に座って『全編フルボイス! CV:全部マサシ』をやるはめになったのであった。
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