第6話 マサシスキルに感動

異世界生活一週間目の本日、目覚めたマサシに喜ばしい出来事が待っていた。


名前:マサシ・サワタリ

性別:男

年齢:28歳

職業:隠れ里の住人

LV:3

HP:75 MP:30

力:18 魔:13 賢:19 速:7 器:10 運:21

スキル:マサシ流剣術LV1 鑑定LV1

加護:ゲーム的な色々

呪詛:フラグリバーサル



「スキルだあああああ!!!」


 残念ながら魔術はまだ覚えていなかったが、剣術と鑑定スキルが芽生え、スキル欄で輝いていた。


「このマサシ流剣術ってのは気にかかるが、剣術は剣術だよ……うん」


 さっそく木刀を持ち、庭に出るマサシ。


 この時点で「おや」と思うことがあった。普段なにげに手にとっている木刀、それが体の一部のように自然に手の中に収まったのだ。


 首を傾げながらもいつもどおりに素振りや型の真似事をしてみる。


 するとどうだろう、使うべき筋肉、動かすべき部位、それらがいきなり身についている、というか知らぬ間に身体が覚えていたというような状況になっていた。


「おお……おお……わかる、わかるぞ! これが剣術!」


 剣術家が聞いたら怒りそうなセリフだが、実際にマサシの動きはただの棒振りから剣の素振りに進化していた。


 言ってしまえば素人に毛が生えたようなものだが、毛が生えているだけかなりマシである。


 次に試した鑑定、これは良い意味で期待を裏切った。


「まずはあの苦くてスウっとする草でいいか……」

 

 鑑定のスキル上げに使っている草があった。


 家の周辺に大量に生えていて、どことなく悪い草には見えなかったためチョビチョビと齧っていたのだが、齧った後に胃がスッキリするような感じが癖になってタブレット代わりにちょいちょい齧っている草だ。


 草に手をかざし『鑑定』と唱える。するとステータス画面と同様に視界に草の情報が現れた。


【光原草】

 効能:????

 毒性:なし


「ちぇー、わかるのは名前と毒の有無だけかあ。でもこれはでかいな」


 サバイバル生活において何より危険なのは毒である。水であれ食べ物であれ良かれと思って口に運んだものが害を成すことは多い。


 分かりやすく『毒』を意識するのはキノコ類だが、植物にも当然毒性が強い物はあるし、果実や小動物にまで毒性を持つものは存在する。


 日本においても山菜の誤食による食中毒は毎年発生しているし、毒性がある果実の誤食もゼロではない。


 いかにも毒であるという見た目であればまだしも、スズランとギョウジャニンニク、スイセンとニラ等、知っていれば気づくが知らないと同じ草に見えるレベルでそれなりに似ている毒草は日本にも数多く生えているのだ。


 これが異世界となれば全てが見知らぬ動植物であるため、鑑定スキルで毒の有無がわかるのは今後の生活において大きな助けになることは間違いなかった。


 マサシは鑑定スキルの取得に大きく喜び、家の周囲の物を片っ端から鑑定して回ったのである。


「ううむ、意外と毒草が生えてるものだな……」


 マサシが鑑定した植物は別種だと勘違いしたものを除けば十二種類だったが、そのうち四種類に何らかの毒が含まれていた。


「これなんかどう見ても地下茎がジャガイモなのに……毒なんだもんなあ」


 マサシが鑑定した植物『ゴーラ』この植物は葉と茎、果実に毒がある植物で、鑑定結果は正しかった。


 しかし、実は地下茎だけは唯一無毒であり、ジャガイモ同様に茹でればホクホクと美味しくいただけたりするのだが……現在の鑑定レベルでは地下茎を判定したければそれだけを意識しなければ正確な情報を得ることが出来ない。


 つまり、きちんと掘り出してから鑑定していたのならば、その有益性に気づけていたのだが……今回はそうはならなかった。


 近い将来鑑定レベルが上昇すれば、そこで再鑑定を試したならば……美味しくいただけるのに気づけるかもしれない……。


 

 そしてこちらに来てから十日が経った。


 この日も朝起きるとレベルが上っていて、新たなスキルも得ていた。



名前:マサシ・サワタリ

年齢:28歳

職業:隠れ里の住人

LV:4

HP:78 MP:35

力:22 魔:17 賢:24 速:9 器:16 運:22

スキル:マサシ流剣術LV1 マサシ流剣技 鎌威太刀カマイタチ 鑑定LV1

加護:ゲーム的な色々

呪詛:フラグリバーサル



「あれ……なんか剣技覚えてる……」


 マサシはかつて武器で戦う対戦格闘ゲームにはまり込んでいた時期があった。


 木刀で鍛錬をするうち、ついついそのゲームキャラを思い出して必殺技を真似ていたのだが、奇しくもそれが形となって現れてしまった。


「むむ、身体が出し方を知っているようだ……どれ!」


 林に行き、立っている木から少し距離を取る。なんとなくでは有るが『鎌威太刀とは離れた対象に風属性の斬撃を与えるものである』と理解しているからだ。


「ではゆくぞ! マサシ流剣技! 鎌威太刀!」


 別に言葉に出す必要はなかったのだが、ついついノリと雰囲気で振りと共に技名を叫ぶマサシ。


 ピュン、という音と共に風の刃が木刀から放たれたのがマサシにもわかった。


「おお! ……あれえ」


 刃先から飛び立った風の刃は木の表面に僅かな切り傷を作りそのまま消失した。


「もっとこう、ズバ! って感じで木が倒れたりするのかと思ったけど……まあこんなもんか。レベル低いしな」


 その後、距離を調節して射程距離を調べたり、MPの様に何か消費するのか試すために連発したりと色々試していた。


「今の所射程は2m、威力は果物ナイフで思いっきり木に切りかかった程度、連発して消費するのは多分体力!……でもこれ鎌威太刀を出さずに木刀振り回してても同じくらい疲れる気がするな……」


 正直なところマサシにとって現状の鎌威太刀は微妙スキルではあったが、アニメの武道家に憧れ手からビームを出す練習をしたり、剣に見立てた傘を逆手に持って振ったりしていたマサシなのでこれはこれで喜んでいた。


「ふふ、やればやるだけ何かしら得られるというのは悪くないな」


 なんだかようやく異世界生活のスタートラインに立ったような気分になるマサシだった。


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