第6話:サンタコスのサプライズ。

で、一週間ほどで天気君はアンブレラに、いろいろ教わった。

エルフの里のことや日常生活のこととか魔法学校のこと家族、風習。

向こうでも家に住んでたんだろうけど、向こうの文明がどこまで発達して

るのかはアンブレラの話でだいたいのところは知ることができた。


だから、アンブレラの住む世界はとうぜんゲームやファンタジー小説に出てくる

ような牧歌的な風景を天気くんは想像した。


まあ、百人が百人そう思うわな。


「高層ビル群の中でレデョーススーツ着てるアンブレラなんて想像できな・・・」

「ん?、アンブレラがレディーススーツ??」

「ん〜なるほど、でもそれもありかも・・・」

「セーラー服とか・・・家事してもらう時はメイドさんの衣装着てもらう

とか・・・?」

「アンブレラのJKコスとか見たらもう撃沈だよな」

「メイド服なんて着られたら、どうする?」

「無敵だよな・・・僕、熱が出てうなされるかも・・・」


「なに、ぶつぶつ言ってるの?」


「あ、なんでもないっす・・・はは」


天気くんの妄想はいけない気持ちも含めて果てしな〜く広がって行くのだった。


で、アンブレラにの家族は両親と妹がひとりいるらしい。

娘が突然いないくなってご両親はきっと心配してるだろうなって天気君は思った。


あなた方のお嬢さんは僕んちで元気にしてますから、安心してくださいって

知らせてあげたかった。

不慮の事故に見舞われて起こったことだから里に返してあげたくても天気君には

アンブレラをどうしてあげることもできない。


で、天気君は人間の生活についてもアンブレラに教えた。

最初に教えたのは部屋の間取りにタンスや家具の使い方。


なによりまずは早く環境に慣れること・・・。


水洗トイレの使い方とかテレビの見方、DVDの使い方・・・スーパー

での買い物・・・お金の概念・・・まあそれはアンブレラの国でも同じだった。


あと洗濯に掃除・・・だけどそんなに一度はアンブレラにとって負担になる

だけ・・・まあ、こういうことだよって天気くんは知っておいてほしかったから

教えただけ。


ある日、天気君が大学から帰るとなんとサンタの格好をしたアンブレラが

待っていていた。


突然の彼女のサプライズに天気くんはめちゃ喜んだけど・・・。


「え?・・なんでサンタコス?・・・・クリスマスでもないのに?」

「それにしてもアンブレラ、サンタクロースなんてよく知ってたね」


「なに言ってるの私の国にだってクリスマスはあるんだよ」


「そうなんだ・・・あはは、ごめん日本人感覚でモノを言ってた」


「このサンタの衣装がイヤなら元に戻しましましょうか?」


「いやいや、そのままでいいよ、めっちゃ可愛い・・・サンタコスで迎えて

くれて嬉しいよアンブレラ・・・もう最高」


「あのさ・・・ひとつ聞くけど・・・アンブレラの衣装って魔法かなんかで

好きに変えられるの?」


「うん、変えられるよ・・・汚れたら綺麗にもできるし・・・」


「ああ、イベント会場で見せてくれた・・・あれね」


「それがどうかした?」


「いやいや・・・それなら僕の好きな衣装に変えてもらえるかなって思って」


「大丈夫・・・どんな衣装にでも変えちゃうから、言って?」


「分かった、その時はまたお願いしようかな・・・」


天気君の考えてることはひとつ・・・アンブレラのメイドさんそれもスカート

超短めの・・・。


「でもアンブレラ、なんでクリスマスってこの季節?」


「私の国ではクリスマスは夏なんだよ」


「うそ〜めっちゃ違和感あるんだけど・・・」

「僕たちの世界じゃクリスマスは冬って決まってるんだよ・・・」


「国が違えば風習も違うの」


アンブレラは嬉しそうにそう言った。

もとより順応性に長けたエルフ・・・アンブレラはもうすっかり天気君に

気を許していた。

まだ、全面的にじゃないけどアンブレラは天気君を好きになりはじめていた

のだ。

毎日顔を合わすのは、今のところ天気君しかいないからね。


真夏の夜、天気君はアンブレラと仲良くクリスマスケーキじゃないバースデー

ケーキを食べた。

もちろんエアコンが効いた涼しい部屋でね。

今時、アパートと言えどエアコンがついてない部屋なんて借り手なんてないからね。


天気君はケーキを食べながら言った。


「やっぱりなんか変な感じ・・・」


アンブレラは口の周りにホイップクリームをヒゲみたいにつけてる天気君を見て

ケタケタ笑った。


「大丈夫?天気君サンタさんのおヒゲみたいになってるよ」


細やかなふたりの熱帯夜が穏やかに過ぎていった。


つづくかも。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る