第107話 収穫祭り

 バナナとカカオ……チョコレートの実を収穫し、次はいざ、てん菜だ。


「じゃあ進むぞ」

「はい」


 俺が声をかけると皆が揃えて返事をした。


 収穫の時は見なかったミゲールが再び姿を現し、また先導してくれて、ダンジョンの中を進む。


 収穫で思い出したが、竹の方も冬の前に沢山採っておいた。

 魚籠や背負い籠やザルなどを冬の手仕事にしてもらう為に多くの家庭にて作るよう言ってあるから、今頃コツコツ編んでいることだろう。


 ミゲールがふと前進を止めたと思えば、触手で下を指し示す、そこには魔法陣があった。


「お、今度はあそこに地下へのゲートがあるんだな」


『そうだよー』


 俺はやや緊張して足を止め、例のスマホ的な魔道具でこの場所の撮影を行ってから進むことにした。    目印代わりだ。


 全員魔法陣の中に揃ったところでミゲールがゲートと唱えてと言うのでそのとおりにしたら、魔法陣が光りだした。


 勝手に移動させるトラップ系魔法陣でないなら、こっちが起動呪文を言うらしい。


 そして今度はやや肌寒い場所に出た。

 目の前には森が広がってる。



「急に涼しい場所に来ましたね」

 聖女がそう語り俺が、「風邪を引かないように」と言ったところで、


「なんかくるよ!」


 アルテちゃんが鋭く叫んだ。


 ドドドッと、確かに足音が迫ってきた。

 前衛の騎士達が武器を構える。


 なんと猪の魔物が三匹飛び出てきた!

 が、騎士達が素早くなんなく倒した。


「ウェルカム猪肉かよ、愚かな」


 もはや異世界の猪も食材としか見てない俺である。


「肉が自分から来てくれましたね」

「ユージーンもそう思うか! 次は牛が来ないかなぁ」

「さすがにそこまで上手くはいかないでしょうが」

「まあ、伯爵様ったらー」


 聖女のリーディアは俺にそうつっこみつつも、でも、お肉良かったですねーと言って嬉しそうだった。


 聖女は神殿でろくに肉も食わせてもらえない生活してたんだったな。いっぱい食べさせてあげたい。


 俺達は和やかに笑いあって食材を魔法の収納布に入れていく。



「またなにかくる! さっきより強い!」


 アルテちゃんの言うとおり、次に茂みから出て来たのは斧を手にしたハイオーク3体だった!

 2足歩行で巨大で普通のオークより強いやつだ!


 だけど、


「うちの騎士強いな」


 流石のドラゴンスレイヤー混じりのパーティー! ハイオーク相手でもなんともないぜ!


 弓兵は見事な早業で一体のオークの腹に命中させて、次に腹に矢が刺さったオーク相手にユージーンがアニメの強キャラの侍みたいに首と胴とおさらばさせてしまった!

 あっという間に!  


 そして、他のハイオーク相手に魔法使いのコニーが魔法の水の矢でハイオークの顔面に目潰ししたらやつらも悲鳴を上げた。


「ぎやっ!!」


 他の騎士も上手な連携で、突然の水に怯んだハイオークの手足を斬りつけ、急所を槍や剣で貫く。



「なんかここの敵は3体で出てくるのが習性なんでしょうか」


 確かにたて続けに敵が3体セットで出て来た。

 そのユージーンの問いに、



「わからん、一体ずつより各個撃破されにくいと考えてるのかな」


 と、俺が答えたところで、


「こいつらはどうするの?」


 と、アルテちゃんが首をかしげる。



「こいつらは魔石、心臓、牙などの素材だけいただきましょう」


 魔法使いのコニーがクールに答え、騎士達が了承して魔石を心臓付近から取り出す。


「ねー、おちてるぶきはどうするの?」

「ああ、そいつらの持ってた斧か、使えそうだからそれもいただくか」



 ハイオークの素材をゲットしてから、さらにひんやりする森の中を進むと、川と滝があった。

 その滝の下に洞窟があり、ミゲールが入って行くのでついて行くと、わりと広いてん菜の群生地を見つけた!



『はい、絞るとお砂糖とれるやつー』

「あった!! てん菜だ! やったぞ! いくつかは根ごと引っこ抜いて領地で栽培をためそう!」


 俺はいそいそと魔法の布からシャベルを取り出した。


「はい!」



 しばらく収穫作業に夢中になった後、休憩がてら滝でさっき狩った猪を捌いてから、それを鍋の食材にして食うことにした。

 牡丹鍋だ。


 俺はまず調理台のテーブルや包丁やまな板などを出した後、猪鍋の食材を魔法の布から取り出していく、メインはもちろんさっき狩った猪肉。


 残念ながら白菜はないが、代用野菜にキャベツを出した。

 そしてシイタケ、 ネギ、ショウガ、 にんにくなども取り出す。そしてデザートのバナナとチョコも。


 調味料系はごま油と 醤油に日本酒の代わりの白ワイン、それと塩少々と水。


「具体的な作り方は猪肉を食べやすい大きさに切り」

「肉は我々が!」


 肉の処理は騎士達が請け負ってくれた。


「ありがとう、じゃあそこの包丁とまな板を使ってくれ」

「はい」


「えー、次は野菜だが、キャベツはざく切り、シイタケは石づきを取り除いて薄切り、ネギは小口切り、ショウガとにんにくはみじん切りにする」


「私もやります!」

「私も!」


 聖女とコニーが野菜を切ってくれるらしい。


「ありがとう、じゃあその作業はまかせた」  


 ふと、アルテちゃんの方を見たら、俺がデザート用に出していたチョコの実とバナナを手にし、勝手にバナナにチョコをかけて食べていた!


 この子! 俺が教える前にチョコバナナを考え出してる!! 天才か!?

 ──ま、まあ、いい。

 子供はおやつを与えてたら静かだから。


 調理に戻る。


 そして俺は 鍋にごま油を入れて熱し、みじん切りにしたショウガとにんにくを炒める。


 その後で 猪肉を加えて炒め、全体が均一に火が通るようにし、猪肉に焼き目がついたら醤油、白ワインを加えて煮立てる。


 煮立ったら、キャベツとシイタケを加え、さらに煮る。


 野菜がしんなりするまで煮込んだら、水を加え、塩を加えて味を整える。


 そして具材が煮込まれるまで中火で15〜20分程度煮込む。


 そして最後にネギを散らして完成した!


「美味しそうですね!」


 コニーがそう讃えた後に、聖女はアルテちゃんを見て、


「あちらもすごく美味しそうです……」

「デザートを先に食べてる子がいるが、仕方ない」


 俺達は温かい猪鍋を美味しく食べた。


「美味しくて、さらに力が湧いてくる感じです」


 騎士達はもりもり猪鍋を食べてくれて気持ちがいい。


「ほんとになー」


 聖女や魔法使いのコニーもアルテちゃんもハフハフしながら美味しそうに鍋を食べている。


 ちなみにミゲールは食事の時は姿を消していた。

 どうやら食事は不要らしい。


 そして鍋の後のデザートにはとろけるミルクチョコにバナナをディップして食べた。


「甘うまーい!!」



 皆してチョコバナナを絶賛して食べた。










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