第106話 ダンジョンに潜る
ダンジョン地下第三層。
「うわ、濃霧だ」
「ネオ伯爵! 前方に毒の川があると、うちのウンディーネが警告を」
「濃霧に毒の川! そういや冒険者の植物捜索が難航してる理由は霧と毒とか書かれていたな」
なので毒消し草は多めに持ってきてはいるのだが……不意にふわりとミゲールが現れた。
「お、ミゲール!」
『ぼくが先導して、橋になってあげるー』
「ハシになる?」
疑問に思いつつも発光するミゲールの後を追うと、禍々しい紫色の川がけっこうな川幅で存在し、流れていた。
すると、ミゲールがクラゲの触手をビヨーンとながーく伸ばし、対岸まで橋をかけた。
『この触手の上を通るといいよー』
「あ、ありがとう、ミゲール、さあ、皆」
「アルテいくねー」
アルテちゃんが軽やかに先陣をきった。
「失礼しまーす、痛かったらごめんね」
ユージーンはブーツ越しに踏みつける触手を気遣っている。
『ヘーキヘーキ』
「クラゲさん! 重かったらすみません!」
とは聖女のセリフ。
『大丈夫、軽いよー』
「「「失礼します」」」
コニーと他の騎士達もひと声かけて通る。
俺達はミゲールの触手橋を無事渡ったが、毒の川の先は墓場ゾーンだった。
「レイスがいそうだな」
俺がなんとなく寒気のする墓地の只中でそう言うと、
「います!」
掴んでいるロットの先端を光らせた聖女が叫んだ。
「ホントだ、ゾクゾクするのいっぱいいるー」
今回はゴーストのレイスなので、アルテちゃんより聖女の反応が速かった。
そして墓場からわらわら出てくる半透明のレイス達!! ホラーすぎる!!
『ホーリーライト!!』
聖女が聖なる光の呪文を唱えた!
するとあたり一帯まばゆい光に包まれ、レイス達が消し飛んだ!!
「さすが聖女様、一掃してしまわれましたね」
騎士が感嘆のため息をもらす。
「よし、今のうちに墓場ゾーンを抜けるぞ」
俺がそう言うと皆も頷き、気持ち悪い場所なので早歩きで墓場の中を進むと、ミゲールがさらに下りの階段を見つけてくれた。
階段を下り、次に現れたのは何故か天井には青空と入道雲が見えるし、見事な南国風景だった。
ヤシの木がある!
そしてさらに……黄色い果実のなる植物が!
「あそこにバナナの群生地が! バナナがある!
斧かナタで木を切り倒してバナナをもらおう! 正確には木と言うより草の一種らしいから、きっとまた生える!」
「はい!」
俺は魔法の布から斧を出して騎士に手渡す。
そして騎士達は力が強いから、どんどん倒していく。
バナナを一生懸命収穫していく俺達。
「これ、食べていいのー?」
アルテちゃんが黄色いバナナを手に質問をしてきた。
『食べても大丈夫だよ』
ミゲールが肯定してくれたので、俺達は早速バナナを味見することにした。
「あまーい、これ、おいちい」
「これでバナナケーキが焼けるし、バナナミルクも作れるな」
「ホントに簡単に皮も剥けて美味しい果実ですね」
「甘くて好きです」
女性陣にも好評だったし、男性達も手軽に食べられてかつ、美味しいという評価だった。
「あっちのはまだ緑だよー」
まだ緑色をしてるバナナを指さすアルテちゃん。
「採っておけばすぐに追熟するだろうが、ひとまずてん菜を探そう」
伐採収穫にもそこそこ体力を使うので、ここは程々にしておく。
「わかったー」
アルテちゃんがさくさく先頭を進んで行くと、今度は茶色、黄色、オレンジ、紫、緑色のラグビーボールっぽい形の木の実のなる木が群生していた。
「なんか見たことがある気がする植物だ!」
俺がそう言うと、
『これ、色がちがっても全部カカオだよー』
と、ミゲールがあっさり教えてくれた。
「チョコレート!! カカオの実もいただこう!」
「よくわからないですけど、これは美味しいものなんですね?」
ユージーンがわざと丁寧な言葉で俺に問う。
「そう! 手間はかかるが、その種子からとても美味いものができる!!」
『その手間がいらないよー、あの実を割るともうチョコレートかとろりと出てくる』
「な、なんだってーー!?」
『実の色で味が違うよ、黄色とオレンジが甘いミルクチョコレートの味だよ、黒と紫はビター系』
「なんて親切設計なんだ、神すぎる」
『緑色は実はホワイトチョコレート』
「おお……」
ホワイトチョコレートまで完備してる!
「アルテはあまいきいろとオレンジとるー」
「え、よくわからないけど私、緑色行きますね」
「では私も」
聖女とコニーはホワイトチョコレートを収穫に。
そんなわけでアルテちゃんは一番乗りで木に登り、チョコレートの実を楽しそうに収穫していく。
収穫作業が好きらしい。
「では私達は苦いらしい紫と茶色を」
騎士二人がビターチョコレート。
「俺とユージーンも黄色とオレンジ行こう! これの需要が一番高いはず!」
「おおせのままに」
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