第102話 それから…
あれから王太子が侯爵令嬢たるファビオラ伝いで侯爵とザカロス国との税金、関税関係で超優遇条件を約束させたらしい。
おかげで魔法の伝書鳥がお空を何度も流星のように飛び交っていた。
ファビオラの父親は海路の輸出入の官職をしているからわりとあっさりツェーザルロ国からの要求は通ったようだ。
娘の命にかかわるから、あちらのザカロスの王家とも何か大事なものを差し出してでも話をつけたのだろう。
なにしろファビオラの父親は娘を溺愛しているらしく、娘が勝手に婚約破棄をしても許したくらいだ。
それと隣国から優秀な土魔法使いを格安で10人借りられるらしい。
隣国への関税優遇処置の件と聖女を助けた功績で俺に褒賞が出て、王の権限で俺の領地がまた広くなったらしい。
辺境伯の広すぎる土地がまた村8つ分ほどうちの領地になった。
辺境伯たる王弟殿下は、税収が減るのでは?
と少し気になったが、特にダメージはないらしい。
なんにせよ、新しく貰った土地に城を作ってくれるらしいし、王が機嫌をよくして俺は子爵から伯爵まで爵位があがった。
ほとんどファビオラの実家に圧をかけてダンジョンで聖女を拾っただけなのに。
◆ ◆ ◆
ツェーザルロとザカロス王家との話し合いから二日後。俺はツェーザルロの城にしばらく留め置かれ待機していたのであるが、いよいよお預けになっていた治療の時。
「今からあなたの胸を触ることになりますが、あくまでこれは治療ですから」
「は、はい、心得ております」
そしてひとまず治療を行うが、
「あなたは年一でこちらの国に通って来るとのことで、多めに魔力を吸い上げておきます」
他国の者なので頻繁にはこちらに来れない。
彼女は静かに頷き、寝台で横になった。
俺はファビオラのやつれた顔を見たくなかったので、顔の上に布を被せて治療を行った。
つまり、胸を……揉んだ。
モミモミモミモミモミモミモミモミ。
「……は…はあ、はぁ……っ、やっと、やっと体の痛みが……消えました……。
あなたの手は……こんなに……温かかったのですね……」
布越しにファビオラが喋ってる。
くぐもった声……泣いてるような感じがする。
「そうですか、多めに魔力を吸収したので、しばらく疲れて歩くのも大変でしょう。貴方の家の騎士にでも運んで貰ってください」
「はい」
ファビオラは伴ってきていた、自分の家の護衛騎士に姫抱っこをされてザカロス国に帰る為に神殿のゲートに向かった。
◆ ◆ ◆
そして俺とユージーンと聖女も領地に戻ってきた。
未来の夫人達も俺の治療を受けてから、それぞれ実家に戻った。
婚約期間は花嫁修業みたいなのをするらしい。
そして、新たに増えた俺の領地だが、
真冬でも突貫工事でレンタルした土魔法使いが大急ぎで俺と妻達の為の城を作ってる。
ブロックを積み重ねて城を作るゲームを思い出させる光景だった。
とりあえず完成するまでは砦の中で過ごす。
今は用事があってサロンの暖炉の側に来た。
暖炉の前には白銀の毛皮を敷いてあるのだが、その上ではアルテちゃんが丸くなって寝ている。
先日、冬になると村の家畜を喰らいに来る雪狼討伐の為に傭兵と共に斥候の仕事を手伝ったら、疲れたらしい。
「むにゃむにゃ……」
「アルテちゃんは獲物を素早く見つけるから、傭兵達も助かると言っていたらしいですよ」
と、聖女リーディアがそっとアルテちゃんの頭を撫でながら語る。
「うん、アルテちゃんは気配に敏感だからね。ところでリーディア宛にツェーザルロ王家からは衣装、そして神殿からは新しいロッドが贈られてきたよ」
俺は先ほど受け取って来た聖女への贈り物を本人に渡しに来た訳だ。
「素直に受け取ってもよいものでしょうか?」
「返す方が失礼では? とりあえず貰えるものは貰っておくといい」
「分かりました」
「ところで明日はダンジョンのてん菜探索の様子見に行こうと思うんだけど、リーディアもついて来てくれるかな?」
「はい! もちろんです」
そう言ってリーディアは受け取ったばかりの神殿から寄贈されたロッドを握りしめた。
先っぽには綺麗な魔法石がはめ込まれた綺麗な杖だから見栄えがする。
「アルテも行く!」
寝てたはずが急に起きたアルテちゃん。
もしかしたらダンジョン探索に潜ってる冒険者パーティーより先にテン菜を見つけてくれるかもな。
「よし、じゃあ無理ない程度に行ってみるか!」
護衛に魔法使いとドラゴンも倒せるユージーンも連れて行けばなんとかなるだろ!
今回は聖女までいるし!
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