第59話 川と森
パーティー会場では令嬢達と挨拶をしてから王弟殿下やユージーンとも歓談した。
その後、何人かの知らない貴族に話しかけられたが、何をどうやって王弟殿下に恩を売ったのかと問われても、詳しくは重要機密なのでと誤魔化すしかなかった。
俺が唯一の治癒師なら、その能力の説明をすると拉致されたりすると困るし。
ただ俺の司祭系の衣装でなんとなく治癒系だろうなとは察することはできるだろう。
◆ ◆ ◆
パーティーから帰って、翌日にはひとまずエイダとスザンヌにメイド服を支給した。
いや〜〜メイド服って、本当にいいものですね。
そして王城での最大のイベントを終えたので、後は騎士のスカウトだ。
何人かの未だ無所属の騎士に打診を送って、買い物などして時間を潰し、数日後に色良い返事をくれた騎士達と面接後、内定を出してから、自分の騎士となった人達と辺境伯領に飛ぶ。
騎士の叙任式は子爵領の砦で行い、見習いの騎士はひとまず見習い期間を終えてから来てもらう。
「帰宅! ついに貴族になって戻ったぞ!」
「お帰りなさいませ、子爵様」
「ありがとう」
砦の警備を任せていた騎士達に礼を言って、アルテちゃん達を休ませる。
俺も数日間は休みがあるけど後で書類仕事が沢山待っていると王弟殿下が派遣してくれた文官に言われてる。
「お針子になるかもしれないが、とりあえず新入りメイドのスザンヌを空いている部屋に案内してやってくれるか? エイダの近くの部屋にでも」
元々王弟殿下が用意してくれていたメイドにお願いする。
「かしこまりました」
砦には王弟殿下が約束通り、竹が納品されていた。
早速広場で魚を捕るための漁具を作る。
竹の漁撈具、
ナタで割って、細く割いて編む。
結構時間はかかったけど、いい感じの罠が出てきた。
「それなに?」
アルテちゃんが、広場に出てきて訊いてきた。
「魚を捕る罠だよ」
「魚とるの見たい」
「そうだな、勉強ばかりじゃ疲れるよな、息抜きに一緒に川に行こうか」
「うん!」
エイダとスザンヌにはお針子仕事を任せ、お弁当を持ってお出かけ。
護衛騎士は三人ほどお供につけて他の騎士は念の為、砦の守りに残して行く。
自領として貰った土地の視察も兼ねてると言い張りつつもラフな格好で川に来た。
水に入る予定が有るからだ。
その川は透明で清らかな流れが遠くまで続いてる。
「よし、川に入って早速石を動かして罠を仕込もう」
「石をうごかすの?」
アルテちゃんが川にはいろうとする前に質問に答えよう。
「石で囲いこむように出口にコレを配置したら、魚にとっては入り口でしたってやつ、まあ、アルテちゃんは川岸で見ててごらん。水には入らないで、危ないから」
「うん」
「ネオ様、お手伝いしましょうか?」
護衛騎士の一人が親切に声をかけてきた。
こいつ子爵になったくせになにしてんだと内心思われてるかもしれないが。
「えーと、じゃあ一人だけ、他はアルテちゃんに危険がないように見ててくれ」
「かしこまりました」
「承知」
力強い騎士の助っ人で、いい感じに重い石も横ならびに動かして、魚の通り道を一箇所を残して塞いだ。
そこに罠を設置した。
川の水は小さな隙間などを通り抜けるので、水は完全にせき止められたりはしていない。
「それでどうするの?」
「数時間後にまた見に来るとして、それまであそこの森を少し見てみよう」
「まものを狩るの?」
その時ちょうど森から出てきた男女がいた。
男性は薪を背負い、女性はカゴを腕にかけていた。
「ほら、あそこにカゴを持って森から出てきた女性がいる。秋だし、あの人はキノコ狩りをしたんだと思うんだよ。だから魔物よりどちらかというとキノコ狙いだよ」
「ふーん」
キノコには興味がないのかアルテちゃんの反応は薄いが、俺でも知ってるキノコがあればいいなぁと思う。
いいキノコが残って無ければ薪でも集めて帰ろう。そうすれば無駄足にはならないはず。
「もし、万が一、魔物が出たらお任せください」
「ああ、頼むよ」
頼もしい護衛騎士に戦闘は任せる。
どう見てもただの村人が平然と出てきたから、よほどの深部で無ければ魔物はいないんじゃないかとは思うけど。
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