第46話 お城
アルテちゃんが俺に懐いてくれたので、まるで娘ができたみたいでちょっと嬉しい。
辺境伯の城に向かう馬車に、誰が俺と一緒に乗るか三人の令嬢達が少し不穏な感じで話していたが、ここは穏便に済ませるために俺はユージーンとエイダさんとアルテちゃん達と共に乗ることにした。
令嬢達には申し訳ないが、仕方ない。
俺はこの子達を守らないといけないし、まだ俺の庇護下にあるという印のついたものを持っていないからな。
そうして馬車にしばらく揺られていたら、俺はいつしか眠ってしまっていた。
「ネオ、着いたよ」
「んあ? あー、着いたのか、ありがとう」
寝こけていたらユージーンが起こしてくれた。
ユージーンの話によるとアルテちゃんやエイダさんは初めての外の世界に興味津々でずっと窓の外を見ていたらしい。
王弟殿下の住まう辺境伯領のお城は夕焼け空の下、大きく威風堂々とした風情で建っていた。
立派だ……。
「堅牢そうな城だなぁ」
「王弟殿下の住まいに相応しいね」
「そうだな」
城の敷地内を歩く間にも騎士や使用人達とすれ違う度、チラチラと視線がつき刺さる。
お耳もかわいい獣人の二人が目立つのかもな。
◆ ◆ ◆
ヨーロッパ系の城の中を靴音を響かせながら歩いていると、不思議な気分になった。
まるで映画のセットの中にいるようだが、本物なのだ。
そして、てとてと歩くアルテちゃんはとてもかわいいが、俺達大人とは歩幅が違うので俺が抱っこして運ぶことにした。
メイドの案内により、豪華な客室に通された。
アルテちゃんはふかふかのベッドを見るやいなや大喜びで飛び乗っていた。
流石猫!!
しばらく好きにさせておこう。
「夜には晩餐会らしいから、王弟殿下達への旅の土産話はその時にすればいいか」
「そうだね」
ややしてまたメイドが部屋に現れた。
「お客様、湯殿の支度が整いました」
まだ、正式に叙爵してないからひとまずお客様と呼ばれているようだ。
「あ、風呂か、助かる」
メイドに恭しく広い風呂に案内された。
アルテちゃんやエイダさんも湯殿へと言われていたので女性用のお風呂に行ったんだろう。
俺とユージーンは広々とした古代ローマ風の風呂に入った。
「あー、生き返る」
「ほんとにここの湯殿は広々として気持ちいいね」
お風呂から上がるとアルテちゃんやエイダさんの二人は華やかなドレスを着せてもらっていた。
「アルテ、ドレスもらった!」
「よかったなぁ、似合ってるよ。アルテちゃんも、エイダさんも」
「あ、ありがとうございます」
エイダさんは恥じらっているが、スタイルの良さが際立つマーメイドラインのドレスがエレガントで本当によく似合ってる。
そうして晩餐会が始まった。
そこで俺の方はイケオジの王弟殿下やドレスアップした令嬢達とも一緒になったから、とても華やかなものだった。
豚の丸焼きとか名前の分からない豪華な食事に銀の燭台、本当に映画の中にいるかのようだ。
今回は高位貴族令嬢達もいるので獣人の二人は流石に同席は許されなかったが、別の場所でユージーンや大森林に同行してくれた騎士達、そして魔法使いのマーヤさんや巫女さんと一緒に食事を用意されているようだ。
「ネオの正式な叙爵式の前までは、あの森から連れ帰った二人にはうちの庇護下にあるというのが一目で分かる札でも首から下げさせておくとよかろう」
王弟殿下はワインを傾けながら悠然と語る。
あの二人にも気を遣って下さった。
優しいし、何をしてても絵になる方だ。
「お心遣い、ありがとうございます。当面はその札でしのぐとして、後日彼女らに渡す大きめのリボンに紋章を入れたいので明日は仕立て屋に行きたいのですが」
「ああ、では明日は分譲する領地内の視察に加え、衣装店にも寄ることにするか」
明日は俺のものになる領地内の視察に連れて行ってくれるらしい。
楽しみだ。何しろ辺境伯領のどこかには竹林もあるらしいから。
「王弟殿下、何から何までありがとうございます」
「こちらこそうちの魔法使いが世話人なったろう?」
!!
王弟殿下は慈愛を感じさせる瞳でこちらを見ていた。
「魔法使いのマーヤさんがマギアストームだったこと、やはりお気付きでしたか」
「まあな、同じ病を持っているからな」
流石の慧眼ーー。
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