第46話
ハモンドの側近はその姿を見ておののいた。
先ほど矢で射殺したはずの兵が甦った!
サタヴァの装備は最後に射殺された兵からとったので、よく似た格好となっていたのである。
そのため殺したはずの兵が甦ったように見えたのだった。
冷静に見たら服が違うことはわかるはずだが、彼らは今人を手にかけたばかりでもあり、冷静とは程遠い状態であった。
一方サタヴァの方は、周りを唖然と眺めていた。
斬られたり、射られたりしている兵が、折り重なって倒れている。
そのうちの一人と目があった。
その一人は、なんとまだ息があったのだった。口を動かし声にならない声をあげている。
どうやら、逃げろ…と言われているようだ。
サタヴァはあたりを見回すにつれて頭の中が真っ白になってしまった。
生きて立っている連中の中に、仲間の二人がいないのだ。
居るとすれば…折り重なって倒れている中に…
だがどう見ても倒れている者達は、
そばで確かめなくとも、ピクリとも動かぬ命を失った姿となっているようであったのだった。
「ちっ、次から次へと!」誰か怒鳴っている。「殺せ!」
矢が二本自分の胸に刺さるのを見る。
反動なのか背を下にして地に倒れる。
「こうやって俺の仲間を殺したのか…」
倒れた体はゆっくり、矢が刺さった胸から、引き上げられるようにして地から起き上がった。
まるで見えない手がその胸を掴んで引き上げたようだった。
刺さっていた矢が手も触れずに内側から押し出され抜けて落ちていく。
ハモンドと側近らはそれを凍りついたように見ていた。
「あいつらはいい奴だった…こんな俺でも、友達だと言ってくれた…
初めての俺の友達…仲間だ…
それをこんな風に殺したんだな…
味方だと信じたお前らの手によって…」
…死者が甦った!立ち上がった!…
周り中でうろたえた声がささやきあうように聞こえ、それを叱責し再度攻撃しろとわめいている声も聞こえる。
「俺を殺したいか?あいつらを殺したように。だがお前達には殺されてやらないぞ」
兜の者はそう言いながら引き攣った笑みを口元へ浮かべている。
ただその顔は隠されているので実際はどんな表情になっているのかは見えなかった。
「俺にこんな矢は効かない。剣などの武器の刃は通らない。火も水も毒も効かぬ。精神を操ろうとしても厳しいぞ。
俺を倒せないのなら、お前らがそこに同じ様に横たわることになるな…」
生きて動いている連中に向かって歩をすすめたら、怯えてさがってしまう。
そう、これが俺に対する普通の人間の反応だ、とサタヴァは心のうちで思い出した。
「焼けてしまえ。未来永劫、炎にまかれて。貴様らを地獄へ落としてやる。似合いの場所だ」
怒りのあまり姿が変化するのがわかる。
人であった姿は燃え上がる炎をふきあげながら赤く光り輝く巨大な鳥のような姿となった。
フードをかぶった男が興奮して魔神が復活した!などと叫んでいた。
サタヴァは炎の鳥の姿のまま、その連中に炎を吐いて焼き殺そうとせんばかりであった。
そこに黒い四角ができ、猫の姿の明王ルクがあらわれた。
「この馬鹿者!人を殺めてしまうと魔の側に寄せられてしまうぞ!」
そしてサタヴァを引っぱってその場から連れ去った。黒い四角は閉じた。
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