第42話
サタヴァは夢を見ないまま眠れたらしく、朝となった。
クガヤは昨日の午後、二人が倒れ夕方まで寝ている間に、鍛冶屋のおやじさんの行く先の手がかりをさがして、家の中を見たらしかった。
残念なことに、移動先の手がかりは得られなかったらしい。
「このままここで待つことも出来はするんだけど、いつ来るんだかわからない。剣の修理とか、どうしようか。」
サタヴァはこの前の夢で、少女が最後に森の近くに砦があると話していたことを思い出した。
「もしかしたら、このあたりに砦があるかもしれない。
砦みたいな大きいところなら、武器の修理なんかやってそうだ。
あと、町や村にはない、手頃な値段で新しい武器などの扱いもあればさらにいいが…
砦とやらを探して行ってみないか?
はっきりした情報源があるわけでなくて申し訳ないのだか。」
サタヴァは夢で見たと話したが、
彼の勘がひどく鋭いと言うことは、皆この頃にはもうわかっていたため、そんなに妙な言い草だとはとられなかった。
「見つからなければ、町村を探すでもいい。」
しかしサタヴァは、このあたりの地域の情勢をわかって行こうとしたわけではなかった。
そもそも、この三人の中で、このあたりまで来たのは、クガヤしかおらず、
その彼でも、小さい頃に鍛冶屋の住まいに来たことくらいしかない。みなこの地域のことは知らないのだ。
もし情勢をわかっている者がいたら、
帝国側の者とわかれば、まず入るのをとめられるだろうし、
そうでなくても、よそ者がいきなり入ろうとするのは難しい場所だと言っただろう。
二人はサタヴァの案に賛成した。もし何も見つからなければ、こちらに再度戻って泊まるようにした。
「ここ、再々泊まるかもわからないから、今度来たときは、俺の資金の分担から宿泊代としてお金少し置いとくわ」
クガヤが珍しくそんなことを言い出したが、
サタヴァが資金については、砦で使うかもしれないから、置けない場合は薬草にしようと話した。
一行は砦を探して出立した。
大きい建物なら遠目でもわかりそうなもんだが、森の中だと樹木が邪魔をして遠方が見えない。
土地の起伏も少なかったため、やや高いところから見回すことも難しく、サタヴァが樹木に登って周囲を観測して降りて先に進むことを繰り返した。
そんなこんなでどうにか砦らしき場所に辿り着いた。
サタヴァは入口の者に話しかけた。
「討伐隊の仲間なんだが、中に入れるだろうか。武器や物資など、補填の必要があるためだ。」
少し前に帝国側の通行はすぐ許可しろと言われていた事情もあり、一行は簡単に中に通された。
「そうか、ここに本隊が逗留してたのか。
いつの間にか合流してしまったんだな。」
一行は見慣れた帝国の兵装をしている連中が、内部をちらほら通り過ぎているのを見て驚き、歩きながら話した。
一行は尋ね歩き、武器の修理をしている窓口まで辿り着いた。
修理は可能だと聞いたが、金が足りなかった。一行が分担して持っていたお金を全て合わせても、少し足りなかった。
ただこんな話を先方からしてきた。
ずっと魔獣討伐を独自にしてきたため、ここでは薬草の在庫が常に少なく、そこに加えて人が増えたため、このまでは薬草が足りなくなる。
帝国から物資を送るとか言ってるが、送られるものに薬草があるか聞いておらず、あっても量が足りるかが不明なため、
薬草を持って来てもらえるなら、高値で買い取ろうという話だった。
「薬草を採取して来ましょう」ヤトルは言う。
「高値だっていうから、戻ってきたら修理代はもう大丈夫、むしろわりとお釣りくる感じですよ」
サタヴァはお釣りが多くきたら、二人がお待ちかねの武器でも見ようかと言いそうになったが、
ぬか喜びさせても悪いので言わなかった。
「ところで、行くのは俺だけで充分だ。二人はここで休んどいてくれ。
外を散策したときに、薬草のある場所の大体の目星はつけておいたんだ。」サタヴァはいう。
「そんな、一緒に行って、一緒に休みましょうよ!一人だけ働かせるなんて!」ヤトルはいう。
サタヴァはクガヤに目配せをした。
ヤトルはだいぶ回復してはいたが、毒をかなり吸ってしまっていたのか、まだ時折ふらつく状態だった。
「まーそういうことであれば俺らここで待ってるからさ!」
クガヤは意図を了解したらしかった。
クガヤはヤトルに向かって言った。
「薬草のあるとこがわかってるんなら、こいつ一人で行く方が早くすむさ。
もう集合場所もわかってるし、ここで待ってようよ。」
ヤトルが納得したので、二人をエスルデ砦に置いて、サタヴァは一人で森へ戻った。
もちろん出るときも問題なく通行できたのだった。
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