第33話

「たぶん紐は草の繊維をより合わせて作ればできるだろうけど、

その薄い剣がベルトとして使えるから持っていけとおじいさんに言われたんだ」


とサタヴァ。


「それにしても普段の剣の方が少し刃こぼれしてしまった。後々問題にならなければいいが。」


サタヴァはおじいさんの家に帰れば剣は別のがあるんだが、と話を続けた。


「本来はもっと立派な剣を渡されてこれを持っていけと言われたんだが、あまりに立派なんで遠慮したんだ。


実際、剣は、戦うというより、肉の解体とかばっかりに使うし。」


「しっかしなあ、サタヴァの家、なんでそんな武器が普通に転がってるんだ?」クガヤが不思議そうに言う。


「それは共に暮らすおじいさんが、武術の修業をされているからなんだ。」

サタヴァが話す。


「元々、山にこもって武術の仙人になる修業をされていたらしい。

ある日気づいたら、自分のいた山とは違う世界の山へ、

住まいの庵ごと来ていたそうだ。


ここは異世界だとか言ってたので、相当遠くから来たらしい。


元の場所には戻れなかったため、現在の場所で暮らしはじめたそうだ。


自分も武術は教えていただき、後は自分で考えて使いなさいと言われた。」


サタヴァによると、おじいさんではなく、師匠か先生と呼ぶようにずっと言われていたが、


身内のいない自分がおじいさんと呼びたがっていたのを察してか、途中からそれは言わなくなったと。


他所から来たおじいさんが山の庵で武術を嗜んでいるという話は、年月を経て次第にその筋に少しずつ知られることとなり、


弟子なども出来、わざわざ山の庵まで通いに来ていたこともあるという。


「なんか不思議な人に拾われたんだなあ。」


「そうだな、なんか、今の話だったら、俺らがイメージする山の民って感じじゃなさそうなんだな。


ところで、サタヴァのスキルとかステータスとかおかしくね?

本職の兵士とかに比べたらどうなのかわからないけど、俺らからしたら全然戦えるよな。」


二人は以前から疑問に思っていたらしいことを話した。


サタヴァがどうやら、本人が謙遜していても、見た目通り腕が立ちそうなのを見ると、


ステータスボードにステータスが表示されなかったり、


スキルが不能と出たりする件が納得いかなかったのだ。


「アーシイアさんが、魔法のみで動作していた魔導具が、おかしくなっていると言われてた件と関係あったりして…」


「うーん、でも確かめようがないなあ。


俺らのスキルは当たってそうなんだけど、どっからサタヴァの表示との違いが来るんかな。


例えばなんだけど、サタヴァは帝国に住んでいることを帝国側は把握してなかったよなあ。


知らない人物についての情報は、何もなかったから表示されなかったってことだったりして。スキル不能と出たのは、表示が不能って意味だったりしてさ。」


クガヤは冗談のつもりで話を続けている。


「俺らの持ってるスキルを、

どっかでステータスボードにのせる連中がいたとする。


連中は知ってる限りの情報を、全て登録し、ステータスボードに該当する人物が手をかざすと、それが表示されるようにする…

なんつー意見はどうだ?」


三人で話しているうちに、自分らのスキルの話になった。


ヤトルのスキルは作付と開墾なのだが、


役場などに、土地を開墾したときは、そこを申請するようになっている、実は何度か開墾して申請はしている。


作付は誰もがやっているので、してないほうがおかしいことになる。

帝国側が把握しているものがボードにあらわれる、


そういうことがあってもおかしくないですね、とヤトルは言った。


クガヤは、商売の学校に通った時、必ず計算の免状はとらされる。

それは帝国側が発行するという。つまり帝国側は俺のスキルは常に了解してるんだな、とクガヤも笑った。


「今のはスキルの話だよな。じゃステータスはどうみてるんだろう?あれって数値で出てるよね?」


「本人の体格とかをボードがなんとなく感知して判断してたりして。」とクガヤ。


「頭の良さとかは、有名な学校出てたりしたら登録されてたりして、それで数値高くしてたりして。」


「なんか神秘性がなくなってきた!」ヤトルが言う。


「そういや、あれで仕事内容や給与が決まることあるよな。」とクガヤがブツブツ言う。


「もし今の推測が本当なら、なんか納得できないものがあるよなあ。」


一同は次にステータスボードを見つけたら、変化あるかもう一度チェックしてみようという話をした。


「ところで剣の刃こぼれはそんなにまずいのか?」


「そうだな、まずいと言えばまずいかもな。」


切るつもりで引っかかってしまうと攻撃や防御のタイミングがずれてしまう、


最悪そこから剣が折れてしまう場合もあるとサタヴァは言った。


「次の町村で、修理など、できたらいいんだがな。」

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