第11話
焚き火で焼かれている木の枝がはぜている。 日が落ちて徐々にあたりは薄暗くなりつつある。
焚き火はいくつか焚かれており、兵士らがそのまわりで座って食を取っている。
ふとその中から金髪の若い男が立ち上がって座しているギズモンドのそばへきて話しかけた。
「指揮官殿におかれてはご機嫌はいかがであろうか。
このように野趣あふれる行軍は私は初めてであるのでよく勝手がわからない。もちろんギズモンド殿は慣れておろうが。」
声をかけてきた男はハモンドと言って、大貴族の子息だった。
正規軍の所属であり、ギズモンドが大貴族ではないのに指揮官の任を度々受けていることが気にいらないらしく、よく突っかかってくるのだ。
ギズモンドは素知らぬ顔で、「正規軍は帝国国内の守備が主な任務なので、さようであるかと。」などと短めに返答した。
ハモンドはギズモンドが挑発にのってこないので、まだ何か言いたそうではあったが、そのまま自分が座していた場所に戻った。
その後、行軍の先鋒隊の者から、いまどのあたりを進んできたか、また明日はどちらへ向かうかという説明がされはじめた。
行き先の話をしながら、話し手は配布されていた地図の話をし始めた。
「地図に大きくつけられている赤丸が見えると思いますが、これは予測されている魔獣大発生の地域で決戦があると思われる場所であります。
またそのあたりには魔王らもいるだろうという予想はされています。
我々はこの地点を目指して進んでおります。
魔王軍については、その目撃情報は伝聞によるもので、帝国側としては実際に遭遇してはおらず今のところその規模も不明でありますが、
当帝国領土内へ侵入されないよう、また領土を超えて来たら応戦体制を直ちに取れるような何らかの対策を取る必要があるものと思われるため、各隊でもそのつもりでいて頂きたいです。」
魔王軍のあたりは出陣式前後でも兵士らに連絡はされているため、繰り返しとなっている。
「また、この地図は帝国側領土とその周辺、目標地点などを一枚にかいたものであるため、広域地図となっています。
そのため、現地点での目に見える周辺の地形と照らし合わせて進むことは難しいということを、念のため申し添えておくものとします。」
地図は兵士には渡されてないため、この発言は大多数の気はひかなかったが、一部の隊長らは「そうなんだ、俺もっと近くだとか思ってた」と呟いたりしていたので、誤解を呼びやすい地図であったかもしれない。
広域でない、地区別の詳細地図を地域ごとに複数持って行くと、伝聞にて伝え聞くしかない場所を正確にかく必要があるため、仕方ないことであったようだった。
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