第7話
「乾杯!」
「カンパーイ!」ざわめく室内で陽気な笑い声や話し声が響く。
明日の出陣を前に、夕方から夜にかけて兵舎の一角にて簡単な食事会が開かれていた。
まだ日は落ちていない状態だがみな酒はかなり飲みすすんでいるように見える。
あまり酒を飲むと明日以降の行程に響くのだが、今後なかなか酒を飲む機会もなければ、もしかして会う顔が減るやもしれぬという思いから、乾杯の声は途切れることがなかった。
「ほら見ろよ!あれあれ!」
窓の外を指さしながら談笑している一団がいる。正規軍から来ている連中だ。
指差している方角には、三名の例の薬草補給部隊が、軍の訓示を聞きながら並んでいる。
本隊の方は昼間に終わった出陣式だったがこの部隊は参加していなかったので、簡略的にどうやら行っているらしい。
だが、どうやらその三名の格好が正規軍の目を引いてしまっているようだった。
「なんだあれは!あれは武器のつもりなのか?違うよな?槍ではなく農具だよな?畑を耕しに行くのかぁ〜」
「薬草採取の任務らしいぞっ」
「そうか〜耕すところから始めるのかあ〜作るのかぁ〜」
「いやあいつ!あいつの頭!鍋!鍋かぶってら!」
「どれだどれだ」
ワハハハと折り重なって腹を抱えて笑い転げている。
「採取のあとはお薬を煮るのかなぁ〜お鍋で」
「いや本当、なにしてくれるんだろうあいつら。」
「あいつら、なんで雇ってんの?」
ざわつく中、出陣式の訓示が終わって、全隊すすめの号令で三名が歩き出すと、
槍持ちと鍋かぶりが緊張のあまり手と足が同時に出てしまっていたので、笑い声がさらに大きくなってしまった。
あまり笑ったので床に重なって倒れてしまったのが数人いる。
重みでそのままくたばるぞ!離れろ!などと冷静な者が引き離したりしていたが、酒が入っているため、
それらの光景がさらに笑いを誘って今まで大人しくしていた連中まで爆笑する有様となった。
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