第10話 何か知らんがロボを預かることになった
カイル王子とレイちゃんが、
「私は王子だが、カイルと呼んでくれていいぞ」
「カイル? 私、レイちゃん」
「ん。私はレイちゃんと呼ぼう。私のことをカイルと呼べるのは特別なんだ」
「トクベツ?」
「あぁ、特別だ」
「レイちゃん、トクベツなんだ」
「そうだよ、勇者さまだからな」
とかなんとか、小さな恋のメロディを奏でているのか、そうではないのか、微妙な会話を繰り広げている。
いかんせん、五歳と七歳だからな。
こんなもんだろう。
そして思う。
オレとアニカは二十歳だけど、二人の会話は……と思い返していたらアズロさまに話しかけられた。
「それにしても流石はルドガーさま。伝説のロボット生命体をみても動じることなく平常心ですね、立派です」
「本当にそうですわ。私どもは浮かれてしまってお見苦しい所をお見せしました」
クリスティンさまと二人して恥ずかしそうにしている。
いや、そんなことないですから。
思い切り動揺してますから。
平常時から平常心はないですから、オレ。
口に出さないだけで、心の中では思い切りお喋りクソ野郎ですよ、オレ。
表情筋の死んだタダのコミュ障なんですぅ~。
……と叫べた方が楽な人生だった気がする今日この頃。
なんだか後ろの方で「動じないルドガーさま素敵」「最強の魔法使いは違いますね」「ほら見て、あの涼やかな目元。いつ何時も美しいわ」「緊急事態にも適切に対応してくださる勇者ルドガーさまがいらっしゃれば安心ね」などとザワザワした声がしているような気がする。
気のせいにしたい。聞き流したい。でないと居たたまれないんだ、オレがっ。
「こんなにプリティでキュートなレイちゃんに、その辺の石ころを食べさせるわけにはいかないっ!」
七歳児のカイル王子が叫ぶ。
いいなぁ、七歳児は自由で。
カイル王子の隣にいる爺や、温厚そうだもんなぁ。
「爺っ、レイちゃんを王宮へご招待するぞ」
「カイルさま、それは無理でございます」
即却下された。現実は厳しい。
「なぜだっ⁈」
上品な雰囲気の長身グレーヘア紳士が優しく説明する。
「王宮の天井は、さほど高くありません。また、高価なものも沢山ございます。勇者さまとはいえ、五歳児のロボット生命体の方を両陛下の許可もなくお招きするわけにはいきません。それに勇者さまのことは神殿の方が決めることになっております」
「んっ。そうだった」
真っ当な説明にカイル王子も納得するしかないようだ。
しかし聞き分けのいい七歳児だな。
オレが七歳児だったころなんて……。
などと考えていたら、アズロさまに話しかけられていることに気付いていなかったらしい。
「つきましては、レイさまを預かっていただいてよいでしょうか?」
「……は⁈」
何が「つきましては」なのか分からない。
「ええ、ルドガーさまのお家は魔法の家ですし。レイさまが突然大きくなられても対応可能ですよね」
クリスティンさまがにこやかに言った。
まぁ、確かに。
あの家なら、むしろ面白がって対応するよな。
でもさ、何かあったらオレだって対応しなきゃいけないし、子供の相手が得意ってわけでもないんだが……。
「それに、ロボット生命体と一緒に生活できると知れば、アニカさまが大喜びされるのではありませんか?」
んっ。確かに。
アニカならレイちゃんのことを喜んで研究対象にしちゃうね。
てな感じで、オレはロボット生命体レイちゃん五歳を預かることになった。
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