第7話 勇者を召喚しましたら
オレはガチンと固まった状態で、魔法陣から転がり出たものを見つめた。
え? ロボット?
ちょっと引く。
実際、オレは一歩後ろに下がった。
しかし、周りの反応は少し違う。
ワクワクしているようで聖女や神官たちの表情は輝いている。
えーと、ピンクと白のカラーリングの110センチくらいの立体物がゴロンと大理石の床に転がってるんですけど。
その頭のピョコンとなっているのはツインテールですか?
ロボットなんで髪というには硬そうな素材で出来ているようだ。
右側に赤いおリボンみたいなものが付いているプリティ仕様。
と、いうことは髪のつもり……ってロボットに髪は必要なのか?
全身が硬そうな素材で出来ているが、裸というわけではない。
白いワンピースっぽいものを着ている。
下に短いズボンを履いているからチュニックというのだろうか。
とにかくワンピースと呼ぶにしても、チュニックと呼ぶにしても、硬そうな素材で出来ているものだ。
転がった勢いで召喚用の魔法陣、ちょっと削れちゃってる感じですけど、いいんですか?
「勇者よ!」
「勇者さまだ!」
オレの戸惑いをよそに、聖女や神官たちはザワザワと盛り上がっている。
なかには感激のあまりに涙する者もいるし、幸せそうな表情で気絶していく者もいる。
勇者か。勇者さまが来たんだね、うんうん……。
って、ロボットってトコは突っ込まなくていいの?
それに目の前に転がっているのは、幼稚園児くらいのサイズのロボットだぞ。
なんかこう……デザイン可愛いんですけど~。
目を閉じてクタッとした様子で転がっているさまは、なんだかぬいぐるみっぽいし。
勇者設定なの? これで?
ロボットはロボットでも、お給仕してくれそうなロボなんだが?
「……ロボットだぁ……」
カイル王子が白い頬を赤く染めてウットリした様子でつぶやいた。
でもそれは突っ込みとは言わない。
いや、気持ちは分かるよ?
だってロボットだもん。
オレだって、前世ではロボットに憧れたもんだよ。
カイル王子がウットリしちゃうのはわかるよ?
でもさ。まずは魔法陣からロボットが出てきた時点で驚かない?
そこは驚こうよ。驚いていこうよ、みんな。
キョトンとした表情をしている小ぶりなロボットは可愛らしいけど。
そうだけれども。
そもそも、この世界では機械とか発達してないよね。
ロボットって概念はあるのかい?
「あぁ、これは
「そうですね、クリスティンさま。ロボット生命体ですよ。愛し合い過ぎた子供のいない夫婦が、鉱石に魔力を注ぎこみ過ぎたせいで誕生したという……」
「そうよね? アズロさま。強すぎる魔力と愛でこの世に誕生したというロボット生命体よね? この方は、全身が魔法を帯びた鉱石で出来ている、ロボット生命体という尊いお方よね?」
あったーーーっ!
ロボット生命体という概念があったーーーっ!
「しかも白とピンクのツートンとは。なんと厳かで神聖な色合い」
「えぇ、アズロさま。ピンクといえば愛の色。愛を表す髪色に聖衣の白を纏ったロボット生命体ですわ」
いや、ピンクと白のツートンとか、カワイイだけだからね?
確かにピンク色は愛の色とか言われてるし、聖衣は白が基本だけど。
……ってえぇぇぇぇぇ。マジで、聖なるロボット生命体なの⁈
「んっ……」
あっ、喋った。
ちゃんと喋れるタイプのロボットだ。
「ああ、ロボット生命体の勇者さま。我が国へお越しいただきありがとうございます。私の名はクリスティン。聖女をしております」
クリスティンさまは優雅に一礼した。
「突然、お呼び立てして申し訳ありません。私の名はアズロと申します。よろしければ勇者さまのお名前を教えていただけないでしょうか?」
ロボットは目をこすりながら起き上がった。
そして、ぺたんと器用な女の子座りの状態で言う。
「ワタシ、レイちゃん。五さい」
レイちゃんと名乗るロボットは右手をコチラにのばし、短めの指をめいっぱい広げて手の平を見せてきた。
そっかぁ。五歳かぁ。キチンとご挨拶できて偉いねぇ……。
ってか、五歳⁈
召喚しちまったけど、コレって誘拐じゃねぇか?
勇者召喚というより、幼女誘拐じゃないか?
色んな意味で、オレとこの世界、大丈夫か⁈
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