第22話 9月のあれやこれや

 術後1ヶ月から2ヶ月までのことについて、書いてみます。


 この期間は大きな変化はなく、調子の良い日もあれば、あまり良くない日もあり、ときには痛むこともあり、という感じです。ゆるやかに快方に向かっているのかもしれませんが、急に良くなったとか、そういう実感が無い分、気持ち的には結構しんどいです。


 最初のひと月より余裕があるからこそ、いろいろ余計なことを考えがちで、気分が落ち込みます。

 これは、過去の病気やケガでの療養経験上、予想出来ていました。


 入院中はある意味では楽なのです。周りには自分と同じような病状の患者さんがたくさんいます。スタッフも患者の気持ち(不安や辛さ)や身体の状態(痛み)を理解していて、必要なケアをしてくれます。


 自分ひとりではない、ということ。

 良くなる、ということ。

 退院という目標があること。


 入院中は大変ですが、頑張ろうという前向きな気持ちになれます。


 療養ひと月を過ぎたあたりでのいちばんの不安は

「先が見えないこと」です。


 統計的にある程度、治療の経過や見通しはつきますが、それでも個人差があります。


 いつ、どこまで、治るのか。


 医学は科学ですが、患者その人による反応の差が大きい、あやふやな部分を持つ学問だと思います。

 ハッキリと断定したことは言われませんし、医師せんせいにも言えませんよね。


「いつ良くなるのか(以前と同じ生活に戻れるのはいつ?)」

「手術したのに、手術後も手術前と同じ痛み止めが必要なの? いつまで飲むの」

「3ヶ月とか、期限を教えて欲しい。先が見えないと頑張れない」


 家人のこれらの問いかけは、私自身の疑問そのものでもあります。ピンポイントで不安をえぐられているような気持ちです。

(そんなことは私に聞かれてもわからないし、教えて欲しいのは私の方だよ!)

 そう言いたくもなります。


「他のことは何も心配しなくていいから、療養だけに専念してください」

 そうだったら、どんなに楽かと思います。

 自分だけでも精一杯のところへ、家族の不安をケアすること、機嫌を取ることを課せられるのは、重いです。


「大丈夫、大丈夫」と安易に言って欲しくはないですが、ちょっとだけ弱音を吐きたい時があります。ただ受けとめて欲しい時があります。……人間だもの(笑)。

 腫れものにさわるように扱って欲しいわけではなく、いつも通りで良いのです。


 同じ土俵の上で同じように心配していると、不安に押しつぶされて共倒れとなってしまいます。どっしりと立って、ドンと構えて支える人が誰かいて欲しいものです。


 療養中の人を問い詰めたり、追いつめることなく、そっと見守って、ただ静かに待っていてください。


 身近な人の中に療養している方がもしおられたなら、これが私からの個人的なお願いです。






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