8話:相性のよさとわるさ

 茨鉄いばるぎは土使い・郷極冥菱ひるおきめぎどとおそらく風使い・あらしと書いてRAMランと呼ぶひねくれものを警戒しながら次元ホールにて水の技を鍛えていた。





 郷極冥菱ひるおきめぎどが土使いなら戸塚剣縦とつかそうらよりも茨鉄いばるぎが不利になる。





 土と水。

 あの郷極冥菱ひるおきめぎどが口にした命令の主。

 ぬすみ聞きした気分になるのだが彼が守ろうとしている雷使いは……





 いた!

 いや、しびれか?





「やっぱ本物じゃないか。でもしびれるのか」





 うわさをすれば戸塚剣縦とつかそうらか。





「お前の退屈をしのげる相手にはまだなっていない」





 初心者から中堅ぐらいにはなった。

 といってもそれは茨鉄いばるぎの気持ちでしかなくてまだまだ戸塚剣縦とつかそうらにはとどかない。





「あんたが次元ホール以外にも手を伸ばしてルマリアを調べたおかげで現実世界でも雷は使える。相性にもよるが合法的な自衛じえいができて助かってるぜ」





 戦いにきたわけではなさそうだ。

 正直に言うともう次元ホールでのやり取りはうんざりしていた。





 いつも本物の自分を隠し、水でできたクローンを使ってその場しのぎをしている。

 水分がないと思うとおりにいかないから水を当たり前のようにはなてることを利用して離島りとうまでいって海水やあらゆる水分を採取した。






 もちろんパスポートを使ってむかし海外で出稽古でげいこをしていた感覚で行けるところは行ってきた。







「戸塚のまえで余計な戦いをしたせいでこっちが損をした。はやく帰れ」







 仲間にはめぐまれていないのかやたら茨鉄いばるぎにからむ戸塚剣縦そうら






 戦ってもしかたないのに。

 ルマリアも何を考えているのだろう。

 人間世界をほろぼすとか異世界人にありがちな目的もいまのところなさそうだし。






 俺たちがこんなのんきに次元ホールで語るとは。

 もう結構長い期間たたかってるのか。






 日常を取り戻すためにはたたかうしかない。

 それでも無益なたたかいはけたかった。






 ん?

 2人は地中と空中から誰かくるのを察して攻撃をけた。






「ちっ、外したか」






 あの声は郷極冥菱ひるおきめぎど

 ならあの空中攻撃は?






「おやおや。不意打ちとはずいぶんと余裕がないな」






「そりゃどうも。ひとの人生めちゃくちゃにしておいてのうのうと生きているお前よりはちゃんと死なない程度の攻撃にしておいたんだけどな」







 ラン?ってやつか。

 どうやら戸塚剣縦とつかそうらと因縁があるらしい。






「あんたにうらみはないが水使いはほろぼせと命令がある。別に指示待ちでもなんでもないが俺はここできたえる理由がないから仕方なく」







 仕方なくのわりには殺意がこもった土のあつかいだった。

 まるでアニメみたいに地面をトゲに変化させて串刺くしざしにしようとするなんて。







茨鉄いばるぎ!あんたはそっちの土使いを。俺はこの風野郎かぜやろうをたおす! 」






 土使いとは知り合いでもないのか。

 組んでるにしては変な戦いだからここは自分の心配をしたほうがよさそうだ。






 土使いの地面攻撃は続く。

 もう立てる場所はなく、この次元ホールでは岩や土がなくなって足場をつくった土使い・郷極冥菱ひるおきめぎどと水分を利用して浮かんでいる茨鉄いばるぎとの戦いがはじまる。






「初心者だと聞いていたがおもいのほか水を使いこなしているのか」






「もう中堅だ」





 郷極冥菱ひるおきめぎどの顔周りの水分をあやつり、水振動カッターで傷をつける。

 は彼のほほには血の代わりに土塊つちくれが流れた。






 






「このままじゃ文字通り泥試合どろじだいになりそうだ」






「さあ、どうかな」






 茨鉄いばるぎは自分で出せない範囲はんいの水分をさらっとながし、周囲に水をはる。






 次元ホール外に彼が潜伏せんぷくしている可能性もあったから他の水クローンを使って確認させた。






 能力者のついせきはなるべく入念に行っていた。いつ戦ってもいいように。







 郷極冥菱ひるおきめぎどは苦手な土使いということもあってできる限り徹底的てっていてきに。





 まさか向こうも土クローンを使っているとは考えていることは一緒か。






 考えているうちに岩盤がんばんを投げられ、空中に浮かんでいる土が細かい針となって水クローンへ穴をあける。






「へえ。本物じゃないのか」






 お前が言うか。

 おそらく向こうも本物を探している。






 もうごまかせないが風使いがこちらに加勢する可能性と戸塚剣縦とつかそうらが土使いと組んで茨鉄いばるぎへ向かってくるかもしれない。






「戸塚。お前ともここで終わりだ」






 元々したしくなったつもりはないが今から使う技で戸塚剣縦とつかそうらが死ぬかもしれない。






 どうやら土使いも周りの土を増やして何か起こそうとしている。






 クローン同士で水の剣と土のメリケンサックで近接戦きんせつせんを行う。





 こんなのは茶番だ。






 さあ、本物と出会うのはどっちだ!

 土と水を自分自身の周りにふやして大技をねらいながら本物を探す。






--RAMランの過去--







 目の前にいる雷野郎かたきとこうして戦えるなんてラッキーだ。






 戸塚剣縦とつかそうら

 俺が現役時代に何かと上から目線で成り上がるためならリング外での心理戦も部下を使った妨害ぼうがいもおこなう奴だった。






「くそっ!あの野郎!またつまらない試合で勝ちやがって」






 SNSを上手く使えなくてマネタイズやらなんやら出来ないまま普通に試合で負けてモチベが下がり、高校生活も終わりをむかえるころだったので真剣に進路に悩んでいた時にアンチコメントもあって最悪の状態だった。






 その時に見たホラー映画を真似してアンチ全員を呪いでしまつできないか考えるなんて馬鹿なことまで考えてしまうほどんで過食症かしょくしょうがなおらなかった時期もあり、その時に日本国内のメジャー団体に第3試合に選ばれた。






 結果は聞かないでほしい。

 軽量も思うとおりにいかず、もう二度とこの世界に関わらないと戸塚剣縦とつかそうらに何も出来ないまま他の人間が当たり前にやっているつまらない日常へと身をひそめた。






 そこで特に目的もなくさまよっていた俺の前に次元ホールがあらわれ、そこで俺は風をあやつれる能力を手にした。






 そして現在!






嵐人間あらしにんげんに雷か。勝てると思うか? 」






 郷極冥菱ひるおきめぎどについてきてよかった。

 水使いをねらわない雷使いはいない。






 フィクションでは水と雷は相性あいしょうが悪いと思われるが雷は水を通す。

 だが風はどうだ?







 もちろんその時は圧倒したがなにか光がこちらをかすった時に戸塚剣縦とつかそうらが能力を2つもってることを知る。







「光も使えるのか。だからなんだ。風のにおいでわかるんだよお前の攻撃は! 」






 俺は自分の中の風と次元ホール内の風をふくらませて防御と攻撃を両立させる。







 光対策を行うためにひたすら戸塚剣縦とつかそうらを観察しながらかまいたちを使って距離をとりながら攻撃をする。






 雷は風で強引ごういんにはらい、光には風の防御と水分を利用して雲をよびよせ威力を弱らせた。






 郷極冥菱ひるおきめぎどには悪いがかたきうちのためにここで死んでもらうとしよう。






 もともと誰も信じてなかっただろう?

 お前ら!






 すると茨鉄いばるぎという男がこちらを巻き込む水の波を起こし、郷極冥菱ひるおきめぎどは土のかたまりを振動しんどうさせながらこちらをまきこんだ。






「「かんがえることはおなじか! 」」







 俺と戸塚剣縦とつかそうらがハモリだす。






「お前は俺のことを覚えていないだろうがこのまま死んでもらった方がいい恨みを晴らし方になるかもな! 」






 戸塚剣縦とつかそうらはこちらのことにかまわず誰かと喋っていた。






 読唇術とくしんじゅつで確認すると





 つ ち つ か い と く め





 か。

 そういえば郷極冥菱ひるおきめぎどは誰かの命令である雷使いを守るように言われていたとかぐちっていたか。






 あの水使い・茨鉄いばるぎと組めばなにか知っているかもしれない。






 ま、誰も俺は裏切ってない。

 でも郷極冥菱ひるおきめぎど

 お前みずくさいぜ。






 俺もふくめて殺すつもりだなんて。

 俺と戸塚剣縦とつかそうらはそれぞれ適した相手と組むために次元ホールから撤退てったいする。






--あらたな戦い--





 って結局みんな次元ホールの外か。

 そのわりには妙なホールにたどりついているが。





郷極冥菱ひるおきめぎどのせいであの次元ホールはだいなしだ」






 茨鉄いばるぎ郷極冥菱ひるおきめぎどの大きな土攻撃に文句をたれる。







「俺が守るべき雷使い様のためだからな」






 そういいつつ全員殺そうとしていていたのだが。






 するとRAMランという風使いが茨鉄いばるぎにつき、戸塚剣縦とつかそうら郷極冥菱ひるおきめぎどにつく。






 そしてルマリアがあらわれる。






「やっと計画にはいれる」






 茨鉄いばるぎはルマリアが土使いをもし水使いがあらわれたら戸塚剣縦とつかそうらへ助けさせるために郷極冥菱ひるおきめぎどを利用していたのではと命令の主の声を分析ぶんせきしていた。






「やっと命令してきたやつの顔がみれたか」







 郷極冥菱ひるおきめぎどRAMランという風使いもルマリアをみて瞬時しゅんじ把握はあくした。







 戸塚剣縦とつかそうらはルマリアが自分を信頼しんらいしていないと思っていたのかルマリアへまくしたてた。






「お前がいっていた対策ってこの土使いかよ!茨鉄いばるぎ脅威きょういのためなのかもしものためかいつのまにこんなことを」






 このホールが次元ホールではないことも、クローン合戦が続いていることも忘れて4人は戦いの準備じゅんびに入る。






 郷極冥菱ひるおきめぎどはルマリアへ聞きたいことがたくさんあったがどっちにしろ全員倒すしかない。






 だが命令主のルマリアの様子が少しおかしい。






「この次元ホールは一応人間世界ということになっている。でも次元ホールは次元ホール。いつも通り戦ってもらっていい」






 そこへもうひとりルマリアそっくりのモンスターがあらわれた。






「ルマリア!やっと見つけたぞ」





 よくみるとルマリアは怪我をしていて、もうひとりのルマリアと似た見た目の男につかまれていた。






「ルマリア!何があった!その汚い手をはずせ! 」






 戸塚剣縦とつかそうらは光攻撃をもうひとりのルマリアらしき男に攻撃した。





 しかし攻撃は受け止められた。






「ここまで強い人間を育てたとは。それでもルマリアの計画はあまい」






 一体こいつは何者?





「私以外の一種いっしゅほろんだとばかり……」






「ああほろんださ。いちばん強かったルンギスタもにばんめに強かったルキファスも倒れたいま、俺とルマリアさえいれば一種はまた復活する! 」





 やつは名前はとなえる。





「自己紹介しようか。俺はルサシス。ルマリア。君を探していた」






 ルマリアを加えた5人のたたかいはこれからはじまるのだった。






次回・最終回!

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