第2話:使い魔がいる格闘家

 茨鉄いばるぎはもともと海の家で野郎達とバイトをしたり工事現場での肉体労働を利用してあまり身体をつかう仕事になれてない人達が無茶な仕事をおしつけられているのをみると手伝ったり、その場での過ごし方をやんわり伝えて慣れさせるようにうながすなどサポートが得意だった。





 試合でも反則を当たり前のようにつかう相手とリングの上で戦わされるので勝つためにすべての相手とのパターンをできるだけ現場とたまにインターネットを利用して対策たいさくしていた。





 それでも勝てない時は当然あってSNSでたたかれてへこんでいた時に『弁護士になれてたらなあ』と学歴がない自分を否定しつつアンチを法廷でぶちのめしてもらいたい他力本願たりきほんがんさもあった。





 工事現場での仕事なら助けられるのに!

 そんな茨鉄いばるぎも19歳、次元ホール修行者。





 水しかない次元で泳ぎも息継いきつぎもでき、水を銃弾じゅうだんのように打てる修行を自力でおこない、それからは自分自身の打撃に水をまとわせて相手の衝撃をやわらげることもできた。





 それを応用して水型サンドバッグを作ってボクシングの練習を行う。





 自分たちの競技では本物路線とエンタメ要素をかみ合わせようとしていたが、時代はインフルエンサーをモデルとした盛り上げ方による対戦カードが流行っている。





 プロレスではすでにやっていたらしい。

 考えがかたいとどうしてもこういう切り替えに時間がかかる。



 そんな!


 何も!



 できずに去った時の恨みを水でできたサンドバッグに何度も打ち込む!




 いいなあ次元ホール。

 茨鉄いばるぎだけの空間。

 プライベートビーチよりも開放的。




「へえ。他にもここ使ってるやついたんだ」




 茨鉄いばるぎとしたことが気が付かなかった。

 まさか他にも人がいたとは。




唐突とうとつにあらわれて挨拶あいさつもなしか」




 どんなチンピラかと思ってみたら割と男の茨鉄いばるぎでも女の子に見える顔の若い男性がいた。




 服装は季節が夏だからか半袖はんそで通気性つうきせいのよい素材で出来ているのかシンプルなデザインでネイビーな色のスラックスがなるべく動きやすく目立たたない姿。




「まさかここの使い方を知らない人間か。なら都合がいい」




 相手は手から光をはなつ。

 その光は水をまとう茨鉄いばるぎには全身が強い電気風呂に使っているような肩こりが治る気持ちよさではないしびれが伝っていく。




 まさか?




かみなり使い? 」




 相手はとくに何も言わず次の攻撃をはなつ。



 なら水をすべてはらい、別の方向へとんで受け身をとるとそのまま殴りに助走をつけてはしる。



 他に人間の気配もなかったし合法的ごうほうてきではないがあの中性的な若い男性を殴っても見られることはない。



 もっともこれは仮説で他に彼のような相手が次元ホールに来ている場合は別だが。




 しかし相手は茨鉄いばるぎの攻撃を当たり前にかわす。

 そして純粋な体術で茨鉄いばるぎを圧倒した。




 彼の後ろになんらかの気配がある。

 おそらく人間じゃない!?

 そして彼自身もふだんは顔を変えていたから分からなかったがよく見ると知らない男性ではなかった。




「ま、まさか。別の団体だからマークしていなかったが……お前は! 」




お ば か さ ん




 なんだ?

 今の声は?




「ルマリア。今は茶化ちゃかすな。どう?驚いたでしょ?先輩ファイターさん」





 相手はこちらを当然のように知っていた。




 こいつは顔と力をもついけ好かない現役プロファイター・戸塚剣縦とつかそうらだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る