第2話 見た目が完全に厨二病患者
———邪神の封印から2年が経った。
俺は何事もなく12歳を迎えられ……両親と新しく出来た妹と共に幸せに暮らしている。
そう、幸せには暮らしている。
———俺どころか両親すら邪神の力を一切使えないのと引き換えに。
本当にとんでもないことをやらかした。
未だに後悔の念が全く消えない。
というのも。
俺が邪神を封印したせいで———王国でも1、2を争う強者だった父さんが、遂にライバルに負けてしまい、王国最強の座を奪われてしまったのだ。
お陰で俺達への日当たりは悪くなり……今や国を二分していたレーヴァテイン勢力の衰退が著しい。
逆にもう片方の公爵家———アポロニアン公爵家は、王国最強の座を手に入れたことによって著しい成長を続けている。
まぁその代わりと言っては何だが……父さんも母さんも、それはびっくりするくらいに俺達にも使用人にも周りにも優しくなったのが唯一挙げられる利点かもしれない。
「…………本当にごめんよ、父さん」
「にーたっ! にーたっ!!」
「ん? おー、よしよーし! 一体どうしたんでちゅか、ヘレナー?」
因みに今は、執務中の父さんと他のレーヴァテイン勢力側貴族の婦人達とのお茶会をしている母さんに変わって、天使のような妹と戯れている。
———ヘレナ・ダークネス・フォン・レーヴァテイン。
我が家に舞い降りた天使なだけあって、俺に良く似た金髪碧眼の超絶可愛い生き物だ。
まだ1歳なので、簡単な言葉しか話せないが……それがまたかわゆい。
もうウチの誰もが妹の可愛さに骨抜きにされてしまっており、我が家全てのカーストのトップに君臨するのが———何を隠そうヘレナである。
ただ、ヘレナの最初の言葉は、パパでもママでもなく———にーた。
そしてヘレナのいう『にーた』とは『兄ちゃん』のこと。
つまり……この家トップ2は、ヘレナに特に懐かれているこの俺であった。
「にーたっ! にーたっ!!」
「ほうほう分かったぞ、兄ちゃんと飛行機ごっこして遊びたいんでちゅね?」
「あー! にーたーっ!」
天使たるヘレナの意図を汲んだ俺は、彼女の身体を抱き上げると。
「———そーれ、たかいたかーい!」
「きゃっ、きゃっ!」
天井スレスレまでヘレナを高い高いする。
これがヘレナのお気に入りで、どんな時でもこれをすれば機嫌が良くなる。
現に今も、俺の腕の中にいるヘレナは純真無垢な笑顔を浮かべてお手てをパチパチして喜んでいるご様子。
ふふっ、もっともっとやってやるからな。
そう俺が再び高い高いをしようと。
「オルガ様、御当主様が呼んでおられます」
「ん? あー、もうこんな時間か。父上に伝えててくれない? 俺はヘレナの相手で忙しいから3時間くらい待っててって」
「それは前回やりましたので、もう通用しないと思いますよ。大人しく剣術の稽古を受けるべきだと思います」
「…………ちぇっ」
俺はキョトンとした表情を浮かべ、口に指を含むヘレナを渋々メイドに渡す。
するとヘレナがこちらに手を伸ばし。
「あーっ! にーたっ、にーたっ!!」
「やっぱ無理! 俺はヘレナと戯れてる!」
「ダメですよオルガ様っ! 今後こそ連れて行かないと私が当主様にお叱りを受けるのですからっ!」
ここから、俺VSメイドの仁義なき争いが10分以上に渡って繰り広げられた。
「……遅かったな」
「ごめんなさい、父上。ちょっとヘレナを巡って大乱闘スマッシュブラ◯ーズをしていたら遅くなりました」
30分くらい経ったのち、見事メイドにヘレナを強奪された俺は渋々中庭にやって来た。
中庭といっても、この場所は剣術の稽古のために作られたので武舞台がある以外に何もない殺風景な場所だ。
そして父上も俺も、腰に剣を帯びて急所だけを守る最低限の防具を装着している。
「す、スマッシュブラ———」
「それ以上はダメです父上、色んなところからバッシングが来ちゃいます」
それ言ったら著作権侵害になっちゃうかもだからね。
「そ、そうか……。ところで、その腕は大丈夫なのか?」
「まぁ特に違和感も無くなりましたよ」
父さんの言葉に、包帯がぐるぐる巻きになった自らの右手を眺めて肩を竦める。
そのせいで本格的に厨二病みたいな格好になってしまったのだが。
「そうか。なら———いつも通り始めるか」
「うぇぇ……父上強すぎるんすよ……。王国最強並の父上に俺が敵うと……」
訓練用の木刀を構えた父さんの姿に俺は渋い顔を作りながら……仕方なしに同じ木刀を構えた。
「あ、そういえばこの後大事な話がある」
「それは先に言ってくださいよ」
物凄く嫌な予感がするじゃないですかやだー。
「———はぁ……行くかっ!!」
もう全て未来の自分に任せ、父さんへと飛び掛かった。
案の定———ボコボコにされた。
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