第8話 救助


「……たすけて」


消え入りそうなか細い声で、俺に助けを求めてくる。


この子、ボロボロじゃないか!裸足で、身に着けているものもボロボロだ。足や手など全身に痣ができている。長い髪もボサボサで、煤がついていて真っ黒になっている。

よっぽどひどい環境で、耐えきれなくなって逃げ出してきたのだろう。


何でこんな子がこんな目に合わなければいけないんだ。

…この瞬間、俺の揺らいでいた心は決まった。


「ああ。任せろ。」


まあ、ちょろいのは否定しないが。






ようやく男たちがこちらに追いついた。

うしろであの子が震えている。こんな子どもをいじめるなんて許せない。


「ひっひっ、おいあんちゃん。そこの後ろにいる女を出しなぁ。そうしたら見逃してやるよぉw」


取り巻いているほかの連中も一緒に下卑た笑いを浮かべる。

この世界にもこういう輩はいるんだな。


冷たい感情が腹の中に渦巻き始める。


だが、万が一この子が正真正銘の悪者で、たくさんの悪事を働いたとか、この子の浪費癖が強くて借金が返済できなくて奴隷になった、ということも、もしかしたらあるかもしれない。もしかしたら。念のため一応聞いてみよう。落ち着け。


「この子が何かしたのか?この子はなぜこんな姿なんだ?」

「あぁん?理由?そんなの、こいつが高値で売れそうだからに決まってんだろ!それより早くそいつを渡せ。早くしねえと痛い目見んゾ?」


一瞬だがこの子を疑ってしまったことを後悔する。だがよかった。これで心置きなくこいつらを倒せる。


万物切断オールマイティカッターを創造。反発床グラスホッパーを生成し、空に飛びあがり、後ろに回り込む。


「痛い目見んのはお前らだよ?」


万物切断オールマイティカッターは強力だが、万物を切断してしまうわけだから手加減が難しい。ここで加減を間違えて殺してしまったら、大騒ぎになる。一生人殺しのレッテルを張られて生きるのは絶対に嫌だ。


煮えたぎるような怒りとは裏腹に、驚くほど冷静な自分がいることに驚く。


こいつらには死んだほうがましだと思うような苦痛を味わってもらわないと気が済まない。まずはこいつらだ。


目標を定め、空中で極小の万物切断オールマイティカッターを投げる。

そして、万物切断オールマイティカッターが目標に近づいたらそいつらの半径1mの空気を切りたくない、というか非殺傷設定にする。


すると、万物切断オールマイティカッターが半径1mの中を跳ね回る。

名付けて、「跳ね回る暗殺者インビジブルアサシン」だ。



「な、なんだぁああ!?」

目標が慌てふためく。


そりゃそうだろう。肉眼でやっと捉えられるレベルの万物切断オールマイティカッターが体を徐々に切り刻んでいくのだから。


もうこいつはほおっておいても大丈夫だろう。一応殺す前に止めるつもりだ。

よし、次だ。





奴らの後ろに着地した俺は、男たちのアキレス腱を、浅めに一気に切り裂く。


「うぁぁああああ!」「あああぁあぁぁあ!?」「血が、血がぁ!」

悲鳴が上がる。


意外にこの切り具合が難しい。万物切断オールマイティカッターを振り切ってしまったら、切断された足が残ってしまう。


朝、町を歩いていたら足が落ちていました。なんて恐怖すぎるだろう。


だから、浅めに切ったのだが、あんまり浅いとたいして痛みを感じないのでちょうどいい塩梅でアキレス腱を切った。

これでしばらくあいつらは歩けなくなるだろう。


残りは……五人か。もっとてこずるかと思ったが全然そんなことなかったな。




ようやく何が起こってるのかを気付いたのか、残された脳みその小さい五人は武器を構える。


「お、お前、な、何をしたのかわかってんのかぁ?」


「…そっちこそ、今の状況わかってる?もうお仲間がだいぶ倒されてますけどw」

「う、うるさい!うぉぉおぉぉぉおお!」


そう言って突っ込んでくる。


……こいつら、あの雑魚(ドラゴン)より弱いし、頭悪いな。

こんな奴があの子を傷つけたのかと思うと怒りが湧いてくる。



一閃。

その表現がピッタリだった。


その一振り(致命傷には至ってない)で、男たちは倒れた。





倒れている有象無象の中からボスっぽい男を見つけ、胸をつかむ。


「おい、次あの子に手を出したらどうなるかわかってるよな?」

ギロリと睨むと男が震えて首をガクガクと振る。



「よし。じゃあ、さっさと失せろ。もう二度と俺の前に姿を現すな。」

「は、はいぃいいいい!」


そう言うと、仲間を連れて命からがらといった感じで逃げ出した。










女の子のところに戻った。


「大丈夫?けがとかしてない?悪いやつらは全部倒したから安心して!」


「うん、大丈夫……助けてくれてありがと__」



急に女の子が倒れてしまった。


慌てて抱き上げるが、すぴー、すぴーと寝息が聞こえてくる。どうやら寝ているだけのようだ。特に何もなくてよかった。


ただ、このままここに放置するわけにもいかない。

どうしようかと迷ったが、ほかに手段もないので、亜空間に連れていくことにした。


決して、やましいことがあるわけでは断じてない!








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『お帰りなさいませ。』

「ああ、ただいま。」


亜空間に入った俺は、ふかふかのベッドを作り女の子を寝かす。そして布団をかけてあげた。



女の子が起きるまで対してやることもないので、この際、せっかくだからいろいろと創ってみるか。


風呂場、キッチン、自分の部屋…

思いついたものからどんどん創造していく。


最初は遊び半分だったが、やってる途中で楽しくなってきて、どんどん熱が入っていく。


彼女が起きた頃には、自分の夢と希望をつめこんだ、部屋数32,トイレ8,四階建て中庭、エレベーター付きの大豪邸ができてしまい、驚きで彼女はまたしても倒れてしまうのだった……。










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