第6話 初戦闘で得たもの


「おりゃあ!」


「グギャアアァア…」と断末魔をあげて最後のドラゴンが倒れる。

もう太陽は西の空に沈み始めていた。


「やっと終わった…」


そのまま地面に力が抜けたように座り込む。


目覚めてから今までの約10時間。

俺はおよそ120体ほどの獲物モンスターを狩り続けていた。


最初はもう少し少なかったのだが、あいつらどんどん仲間を呼ぶので相当な数になった。


……いや、転生直後いきなり100体越えのドラゴン討伐とかハードモードすぎるだろ⁉

まあ、思ったより簡単に倒せたから苦労はしなかったんだけどね。


どうやらこの世界のドラゴンは思ったより強くないらしい。

ドラゴンが強くない世界なんてあるんだなー。



変なところで感心していると『スキルがレベルアップしました。』と、電子音が頭に響く。


本日何度目かのレベルアップ。

戦闘中だったから気にしてなかったけど、そういえばステータスってどこで見るんだろ。


試しに「ステータス」と、唱えてみる。


「うわっ!」


成功だ。

目の前に自分のステータスが表示される。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


天月薫〈アマツキカオル〉


Lv, 327(限界突破3回)


HP: 40800


Atk:11472(限界突破済み)

Def:7698

Spd : 5023

MP :4500

Luk :10972(限界突破済み)



能力スキル絶対切断オールマイティカッター、スキルLv,32(限界突破3回) 【派生】反発床グラスホッパー

   亜空間支配、スキルLv,24(限界突破2回) 【派生】完全再現


耐性:炎完全耐性


称号:【異世界からの来訪者ビギナービジター】【竜を狩るものドラゴンスレイヤー】【空間の覇者】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






うわーーー!

想像以上のステータスだった。

あんな雑魚(ドラゴン)を倒すだけでこんなにレベルが上がるんだ!あいつ結構おいしい魔物だったんだな。


しかもなんかいろいろと限界突破までしてるんだけど(笑)


正直、レベル上げはドラゴンが一番なのになんで他の冒険者はもっと狩らないんだろう……


もしかしたらほかにもっと効率のいい魔物がいるのかも⁉


だって、あいつらを倒すだけでめっちゃ経験値はいるし、耐性と、おまけに称号(?)までもらえるんだよ?そうじゃないと説明がつかない。


「あーあ。ほんっっっっとうに勿体ないなぁ…」




こんないい情報誰かに教えてあげたいと思ったが、あいにく転生したばっかりなので教える相手が一人もいない。


「この世界についてもっと詳しいことを聞くためにも、町を探してみますか!」


俺は早速立ち上がり行動を開始しようとする。


が、急に強い立ち眩みが襲い、しゃがんでしまう。

そりゃそうだ。だって10時間ほどずっとあいつらを狩り続けていたのだから。

どうやら今の俺に必要なのは休息らしい。


「……飯にしますかぁ。」



ゆっくりと立ち上がる。よし、なんとか立てた。


大量に転がっているドラゴンの亡骸を全て絶対切断オールマイティカッターで適当な大きさに切る。そしてそのまま亜空間に突っ込む。


食料がなくなってしまったとき用にたくさん保存しておこう。


近くの川で水を汲んで準備OKだ。


ドラゴンって食えんの⁉という思考が頭をよぎるが、今は非常時なのでそんなことは言ってられない。


俺もおぼつかない足取りで亜空間に入る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『お帰りなさいませ。主様マスター。』

「ただいま。」


『お疲れのようですが、ドラゴン討伐はうまくいきましたか?』

「ああ、見てたのか。うん、上手くいったよ。レベルアップもばっちりだ。ただ疲れてしまったから今からご飯にするんだけど、少し手伝ってくれないか」


『了解しました。それでは、キッチンを創造します。』


最初からあったと錯覚してしまうような立派で、違和感のないキッチンがそこにはあった。

まったく……有能すぎるだろ。


「それじゃ、俺も準備するかぁ。」


まだあまり慣れないが、もうコツは掴んだ。

それに、頼りっぱなしじゃ主様マスターとしてかっこ悪いしな!


エプロンを体にまきつけ、まな板の上にドラゴンの肉を置き、包丁を握る。

そして食べやすい大きさに切り、網の上にのせる。


そのまま炭火でじっくりと焼いていく。

そう、ドラゴンの焼肉だ!!


もちろん、調理器具などはすべて俺が作成したものだ。

うんうん、なんてエコ(?)なんだろう!






そんなことを言っている間に肉が焼けるいい匂いが鼻をつつく。

うん。匂いは問題なさそうだ。だが、一番は味だ。


一抹の不安を抱えながらいい感じに焼けた肉を口に入れる。

さあ、どうか。


ぱくっ


うぉぉおぉぉぉおお!!!!!!

口の中で、脂と肉が絶妙なハーモニーを奏でる。味付けを全くしてないのにこの旨さとは。いくら食べても飽きの来ない味。さすが異世界、やるな。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




用意した肉を秒で食した俺は満足して、自分で作成したふかふかのソファーに寝転ぶ。


「はあ…美味しかったー!あのさ、聞きたいことあるんだけどいい?」

『はい、どうされましたか?』


「いや、その前に。呼び名がないの不便だから、名前を付けてもいい?」

『名前などなくても私は___』


「いいの。俺がつけたいって言ったんだから。それとも嫌?」

『っっ!い、いえむしろ凄く嬉しいです。』


「よかった。じゃあこれから「シルキー」って呼ばせてもらうね!」


『……はい。ありがとうございます。このシルキー、改めて主様マスターに一生忠誠を誓わせていただきます。』


「うん。これからもよろしく。」






こうして俺とシルキーとの異世界生活が始まった。



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る