第5話 異世界生活初日
「___様、薫様。」
メイドさんに肩をゆすられ、俺は目を覚ます。
「もうすぐ到着します。準備はよろしいですか。」
どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。
…てか、まだ
と思ったが、メイドさんに聞いたらまた難しい説明が返ってきそうなのでやめた。
「これから薫様の異世界生活が始まるわけですが、薫様の異世界での設定は、今年成人したばかりの、両親が早くに亡くなった孤独な少年となっております。0歳からスタートするよりもこちらのほうが異世界を満喫しやすいかという、長旅のお詫びも込めたささやかな気遣いでございます。」
確かに0歳から前世の記憶を持ったままで、人生をやり直すというのは考えただけでもぞっとする。
むしろ長旅でよかったのではないか?とすら思えてきた。
「それでは薫様、お別れでございます。短い間でしたがありがとうございました。」
そうか。メイドさんとはもう会えないのか。
寂しさを感じてしまうが、最後のお別れは笑顔の方がいい。
「こちらこそ!いろいろと教えてくれて助かったよ、ありがとう!」
「それは何よりでございます。あまり早く帰ってこないでくださいね?」
「はいっ!笑」
メイドさんが微笑む。その笑みはまさしく天使だった。
直後、白く暖かい光が全身を包む。
死んでからいろいろとあったが、まさか自分が転生できるだなんて思っていなかったから驚きの連続だった。
異世界。まだ若干不安な部分もあるが、とにかく楽しんで生きたい!
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「……ん」
どうやら転生できたらしい。
ここは外か?生暖かい風がさっきから頬をなでている。
目を開けるがまだ慣れずに視界がぼやける。
さっきから割と強めの風が絶え間なく吹き続けている。しかも風にしては妙に暖かいな……夏なのかな?
風について考えていると、ようやく焦点が合い始める。
……なんだこれは?
ぼやけてよく見えないがなにかがいる。
なんだかすごく大きい。手触りはごつごつしている。ただほんのりと生物特有の暖かさが感じられて、これが生きていることがわかる。
やっと視界がはっきりした。
目の前にいたのは、漫画などで見慣れた真っ赤なドラゴンだった。
「っっーーー!!!!!!」
危うく絶叫してしまうところだったが、下手にドラゴンを刺激してしまいかねないのですんでのところで堪えた。
前世で、「危険生物には背中を見せてはいけない。」
と誰かが言っていた気がするが
答えはノーだ。
僕は、がむしゃらに走った。
が、勿論ドラゴンの一歩は人間とは比べ物にならないほど大きいわけで。
すぐに追いつかれてしまった。
「グォォオオオオオオオオォォオオオオオオ!」
……凄い音量だ。
鼓膜が破れてしまうのでは、と思うほどの大音量でドラゴンが吼える。
ドシン…、ドシン…、
ドラゴンの声量に驚いていたら急にすごい振動が地面から伝わって来た。
「な、なんだ⁉」
どんどん振動、いや、足音が近づいてくる。気付いた時には三十体を超えるドラゴンに囲まれ逃げ場がどこにもなくなっていた。
どうやらさっきの咆哮は仲間を呼び寄せる合図だったらしい。しかもまだどんどん集まり続けている。
ドラゴンたちの威圧感に圧倒される。
力の差、レベルの差に、恐怖の声すら出すことができない。
頭の中に様々な記憶がフラッシュバックする。これが走馬灯か。
いやいやちょっと待ってやっと異世界に転生できたのに異世界転生直後に死⁉
いやだ、それだけは避けたい!
その時自分の中で何かがプツンと切れたような気がした。
手に
亜空間に逃げる、という選択肢はなぜか頭に浮かばなかった。
地面を強く蹴って、一番近くにいたドラゴンに切り込む。
スパっ
血飛沫をあげながらドラゴンの足が二つになる。
「グギャアアァアアァアァァアアア」
悲鳴が上がる。
止まらずに突き進みドラゴンの尻尾をも一刀両断して後ろに回り込む。
俺は迷わずに
切れ味のよさはもう知ってる。
だから、断末魔を聞くまでもなかった。
そのまま次の獲物へと走る。
仲間の死にようやく気付いた
その程度では俺を止めることはできない。
ドラゴンたちの攻撃を全て切断しながら、次の獲物に向かって走る。
あいつら《ドラゴン》を倒すには首を切るのが一番手っ取り早い。だがいちいち
どうすればいいのかはわかっていた。体が自然に動く。
【
すると反発して俺の体が宙に投げ出され、そのままドラゴンに着地する。
二体目。
隣のドラゴンにも飛び移り、
三体目。
一気に三体の命を刈り取った。
これで六体。
『スキルがレベルアップしました。』
電子的な音声が耳に響く。
どうやら使える
すかさず俺は両手に
ははははははははは……
大量の血飛沫を浴びながら、俺はドラゴンどもを全て屠ったのだった……
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