第33話 暗雲
青いビーム、それを弾く蒸気のような高密度エネルギー層。そして、ほぼ無限に近いそのエネルギー。宇宙広し、文明は大小合わせて確認出来るだけでも三十四。それらが確認している資源惑星は二十。そのどれにも該当しないもの。それがその星にはあった。
地球に派遣した密輸業者が偶然遭遇した未知のエネルギー。その情報を閲覧し、宇宙人は身を震わせた。調べるに値する。手に入れる価値がある。しかも、場所は先進星ではない、途上星だ。体の弱い宇宙人ならいざしらず、イガカ星人であれば長期滞在も問題ないことを、密輸業者は教えてくれた。イガカ星人バケルゼッドはその鰓を大きく膨らませた。
イガカ星人バケルゼッド。イガカ星において、貴族階級をもって密輸を取り扱う大金持ち。彼はその豪邸の一室にいた。豪邸は巨大な人工衛星だった。真っ黒な球形。それに無数の傷跡のような白い線の走った星。彼の執務室もまた、同じような壁紙に揃えられていた。マームク星の鉱石を用いたものであった。これもまた、彼の密輸の結果である。彼は、普通の先進星人では踏み込めない汚れた星へ、宇宙人を派遣するのが仕事だった。
そう、そして、他の先進星は容易に攻めこむことができない汚れた星ならば、いくらでも侵略行為ができる。このエネルギーには未来がある、場合によっては宇宙連盟さえひっくり返す力がある。幸いにして、地球人には彼の協力者もいた。彼はすでに、その力を研究している地球人グループを把握しているらしい。その研究施設を急襲し、地球を制圧、なんなら星をまるごと迎撃兵器と化し、連盟転覆を狙うのもありだ。バケルゼッドは、〈ヌーズ〉から転送されてきた最後の情報を参照するすると、見上げるほど巨大な兵器の操縦室へ急いだ。
巨大な円盤。中央部分が丸く、その周辺を土星の輪のように薄い円盤が覆っている。これが、かつての星間戦争に使われた、途上星制圧用侵略兵器であった。圧倒的技術格差によって星を制圧するための兵器、であると同時に、条約によって規制されている兵装を多数装備した、これもまた、ある種のオーバーテクノロジー、否、ロストテクノロジーといったところか。
「制圧してやるぞ、途上人ども!」
勢い良くそう吠えると、バケルゼッドは〈兵器〉を起動する。
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