第15話 宇宙人出陣
宴もたけなわ大盛り上がり。浅田邦彦は予想外の光景に開いた口が塞がらない。
「まさか、この人達、カレーで酔っているのか?」
そうでもなければ、目の前でマネルニットが腹踊りをし、カケルニットは終始笑い、タセルニットがさめざめと泣き続けている理由にならない。
「なんだお前、もしかしてコショウに強いのか」
上半身裸のマネルニットが肩を組んでくる。こうなるとカレー臭い。
「ま、まあそうかもしれません」
気負されて邦彦は答える。
「コショウに強い奴はいいやつだ。もっと食え」
そういってカレーを口に流し込まれる。
「邦彦すごイ。こんなにコショウ強イ。初めて見タ」
「お前はすごいやつだ。やはり我々は友になれる」
タセルニットは邦彦に握手を求めてきた。しょうがなく応じる。正直なところ、ここまでカレーを食べると胃に来るものがある。いくらなんでも限界だ。
「イガカ! イガカ! イガカ! イガカ!」
随分とテンションが上ったようで、男たちが合唱する。もはや邦彦は眺めるしかない。
「そういえばお前、こいつのことを知っているな?」
マネルニットが卓袱台をバンと叩くと、カレーパンと水を通り越し、立体映像が浮かび上がった。映画でしか見たことのない近未来的現象に吐き気と胃の調子を忘れて邦彦は目を丸くした。もはやその立体映像が南方圭介であることは関係ない。
「お前らうざいといった男だ。違いないだろう」
タセルニットが言う。遅れて邦彦はそうだ、といった。
「おれたちはただ、国に帰るためにこうしてこんな辺境にやってきただけなんだ。それなのにこいつが割り込んできたから失敗し、船が壊された。こいつだけは生かしておけない」
マネルニットが憎々しげに言う。
「あいつはそういう奴なんですよ。いつも人の邪魔ばかりするんだ」
邦彦は同調した。
「我々は友だ。こうしてコショウを交わし、そして憎むべき敵がいる。だが、もう安心して欲しい。我々はこの男を倒し、目的を達する」
「ごめん、わたし達はもう帰らなくてはならなイ。だけど、わたし達は友」
カケルニットは急に真面目になってそういった。マネルニットは立ち上がり、拳をえいと突き上げた。
「行くぞ、狩りの時間だ!」
後ろの押入れの引き戸がスラっと開き、その奥から布団が雪崩出ると、そこは広い部屋になっていた。その後ろには円盤の下に三本の足のついた円盤を持つ、紛れも無くこの前、牧場を襲ったUFOがあった。
「おまえたちは……」
「さらば地球! 今行くぞ」
どっちなのかよくわからない台詞を吐くと、三人はUFOの下の方の円盤のハッチを開け乗り込んでいく。そしてその天井が開くと、ふわっとしかしあっという間に夜空へ消え去っていった。
「まさか」
嫌な予感だけが、残された邦彦の胸をつく。
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