第2話

 ふわりと浮上する体感を覚えた。

 眼下に2,3の赤毛身体が転がると同時に赤い飛沫が散り音をたてて色つきの蒸気が生じた。  

 むっとする臭いが押しよせる。その巻き毛から垂れるのは血液なのだと知れた。縒れた毛筋から垣間見える赤黒い肌には絶えず血が滲出し体毛に吸収しきれず血滴を落としては周囲の雪面を瞬時のうちに染めていく。

「前の人間はあんたらに呉れてやった!―― 」血毛身体の群れから怒号が飛ぶ。「そうだ,今度のはうちのとりぶんだ! SSとBSとの談判で決めたはずだ!」

「私には関係のない話です」僕を肩にのせる巨人が答えた。

 巨人が危機一髪のところで僕を救ってくれたのだ。

 蒼白の顔を殆ど隠す長くて白い直毛がそよぎ,降りしきる雪との接触と融合を繰りかえしている。

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