第22話

 それであればクヤの本能に近い感覚が、この場から逃げようとはしないはずだ。ただたんに月島が、職業的な立場から知人への立場へとなって、タクヤに対して親愛的な対応をしているくらいなら、身体が勝手に腰掛けている椅子を引いたりしない。

 けれどもタクヤの身体は、足はこの腰掛けている椅子から立ち上がり、出口へと向かいたがっている。

 そのように思うタクヤ自身、なぜ自分はこの場から立ち去りたいのか、理由はわかっていない。

 職業とはいえ、ここまで親切にタクヤのカウンセリングに当たってくれた月島に、タクヤのこの今の態度は、とても失礼なのではないかとも思う。

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カタルシス つきたておもち @tenganseki

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