第12話

 嘘をついたつもりは無くとも結果的には嘘をついたことになってしまったことに、月島は機嫌を損ねていないだろうか、とタクヤはそっと彼の顔色を窺うが、彼はタクヤからの視線に気付くと、柔らかな雰囲気のまま静かに微笑んでみせる。彼のその表情、雰囲気からは気分を害したような感じは受けない。

 その彼の態度にタクヤはそっと息を吐き、安堵する。

「永良さんは気を使いすぎる方ですよね。たいていの人はこれくらいでは、怒りませんし、よしんば怒ったとしても怒りの感情を表に浮かべません。確かに、永良さんが心配される、機嫌を損ねてしまった、といったことは人によってはあるかもしれませんが、それまでです。気になさる必要はありませんよ。」

 タクヤの考え、感情の動きが月島に見透かされてしまっている。

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