第6話

 ノックに対する応えでタクヤが扉を開けた先の、丸テーブルの傍で立っていた月島は白衣を着ておらず、白のシャツに黒に近い灰色のスラックスといった、スーツほど畏まってはいないが、それでもこのままここで商談が始まる、といってもおかしくはない出で立ちだった。

 扉を開けた先の部屋の雰囲気も、タクヤが抱いていた診察室、といった雰囲気ではなく、薄い緑色の壁紙に毛足の短い鼠色の絨毯といったところから、客を招き入れるような場所だと、当初タクヤは思ってしまった。

 扉を開けてみたものの、部屋の雰囲気や出迎えてくれた彼がそのような感じだったので、タクヤは部屋を間違えた失礼を詫び、扉を閉めようとしたそのときに、

『永良タクヤさんですね。私が月島です。どうぞお入りください。』

 と、柔らかなアルトの声音と笑顔でタクヤの名を呼んだこと、タクヤの担当カウンセラーと聞かされていた月島の名を彼が名乗ったことで、部屋を間違えていなかったのだ、と気付かされた。

 彼のそのカウンセリングのスタイルは、今日まで一貫してそうだった。

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