第5話

 心療内科から処方されたカウンセリングの診察室というタクヤのイメージは、白で統一された壁と床であり、壁際に診察者のための事務机と椅子。その椅子には白衣を着たカウンセラーが座っていて、クライエントの話す内容を逐一メモを取るか、机に置いているパソコンか何かに入力するか、といったものだった。

 タクヤが抱くそのイメージは、心療内科や一般内科といった診療所の診察室の様相そのものだ。医療機関といったものは、どこもそのような雰囲気であると勝手に思い込んでいた。

 それが、月島の診察室はタクヤが思い込んでいたものとは全く違っていた。

 初診のときに月島手ずから紅茶を注ぎ淹れ、飲むように勧めてきたのにはとても驚いたのが、正直なところだ。

 タクヤは最初、ノックする扉を間違えたのかと、思った。

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