第4話

「なんだか、気持ちがすっきりしてきているというか、穏やかになったというか。昏さが無くなってきているというか。そんな感覚になってきたので、もうそろそろカウンセリングは卒業かな、と思っていました。」

 月島はタクヤのその言葉に軽く相槌を打つ。

 柔らかな雰囲気を崩さずタクヤの方に少し身体を向けるような体勢で、タクヤが話す言葉に耳を傾ける。

 彼はメモを取らない。

 この丸テーブルの上には、紅茶が入ったティーポットとティーカップが置かれているだけであり、ティーカップには月島が手ずから注ぎ淹れてくれた紅茶がまだ少し湯気を立てている。

 この、月島の診察室はいつもこのような感じだ。

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