第26話 月花さんの話
ただ『可能性が高い』だけであって、確定ではない。なので万が一にも間違ってはいけないと考えた俺は、月花さんに話を聞くため食堂へ向かった。
食堂は相変わらずの広さと生徒の多さで、これだけの数の人がいれば、騒がしいこともあって、さすがにみんな周りの人なんて気にしないだろう。
月花さんは一年生のたわわ美少女と一緒にいるはずなので、俺は二人がけのテーブルを探す。
すると一際輝きを放つ美少女が二人。月花さんとたわわ美少女だ。くどいようだけど、二人とも『俺から見て』美少女なので、この世界では冴えない扱いをされて苦労している。
「月花さん、今ちょっといいかな?」
「あっ、
綺麗な黒髪ロングという、俺がイメージする美少女の姿とピッタリな月花さんが、俺を見つけて嬉しそうな表情をした。
「ご飯中にごめん。ちょっと聞きたいことがあって」
「もう食べ終わりましたから大丈夫ですよ」
「ちょっとちょっと! 私もいるんですけどー?」
「えっ? もちろん分かってるよ。えっと、名前は確か……、たわ……
「合ってますけど、『たわ』ってなんですか?」
「それを気にしたら負けだからね」
「ちょっと何言ってるかわかんない」
うん、これに関してはたわわ美少女の言ってることが正しいな。我ながら訳わからん発言だった。
俺は予備のイスを持って来てここに座った。右に月花さん、左にたわわ美少女。
「それで冴島さん、私に何かご用でしょうか?」
「答えにくい質問だとは思うけど、あえて聞かせてもらうと月花さん、最近誰かに何かよくないことを言われたりしなかった?」
本当は「最近流れてる月花さんのよくない噂のこと知ってる?」って聞きたかったけど、もしも月花さん本人が噂のことを知らなかったらと考えると、ストレートには聞けなかった。
「あっ、私の噂……」
すると月花さんはすぐに思い当たったらしく、それだけ言って次の言葉は出そうにない。
「ちょっとー、ダメですよ! せっかく私がいろいろお話しして、月花さんに楽しい気分になってもらおうとしてたのに!」
どうやらたわわ美少女も月花さんの噂を知っているようで、月花さんを心配して、できる限りは一緒にいようとしてくれているらしい。
俺が思うにたわわ美少女はその明るい性格も手伝って、愛されキャラを確立しているのだろう。そうすれば見た目が冴えない扱いでも、悪意を向けられることも無く、友達だってたくさんできるに違いない。まさに俺が目指していたことだ。
見た目が冴えないことで向けられる悪意に対して、甘泉先輩は『気にしない』という対応をとることによって自分を守り、たわわ美少女は『受け入れつつも明るさでカバーする』という対応をとって自分を守っている。
それならば月花さんは……? 今まで俺が接してきた月花さんは、本当に明るい表情ができて、服を試着する度に露出度が上がっていくという大胆なところがあって、高価でもない普通のキーホルダーをあげただけで凄く喜んでくれるような、生き生きした女の子なんだ。
それなのに向けられる悪意に対して、『ただひたすら耐える』という選択をしてしまっている。本当は月花さんがそんなことをする必要なんて無いのに。
「そうだったんだ。夢瑠さん、ありがとう」
「どういたしまして!」
そう言ってたわわ美少女は、『えっへん』と
誇らしげに胸を張った。俺はそのたわわのせいで、白いスクールシャツのボタンが弾け飛んでしまわないかと心配になった。
これはネットの誹謗中傷にも言えることかもしれないけど、やっぱり『一人』というのが良くないのかもしれない。悪意を向けられても誰かがそばにいてくれるだけで、悪い方向へ考えてしまうことを防げると思うんだ。
だから俺は転生前に、イケメンから酷いフラれ方をされてしまった女の子に声をかけた。もし俺が声をかけてなかったら、その女の子はよくないことをしていたって、女神様も言ってたし。
「それで月花さん、何か心当たりは無い?」
「えっ……と、実は一ヶ月くらい前に、三年生の女性の先輩から、声をかけられて嫌なことを言われたんです……」
どうやら甘泉先輩の読みは当たっているようだ。
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