第27話 三年生の教室へ
俺はよくない噂について、
「えっ……と、実は一ヶ月くらい前に、三年生の女性の先輩から、声をかけられて嫌なことを言われたんです……」
どうやら
「嫌なことって?」
それを月花さんに聞くかどうか、ものすごく迷った。ただ、証言として聞いておかなくてはならないと思ったんだ。
「えっと……、
「分かった、それ以上は言わなくて大丈夫。思い出させてごめん」
「いえっ……! 私のほうこそ冴島さんにご迷惑をおかけしてごめんなさい」
月花さんが悪いことなんてこれっぽっちも無いのに、申し訳なさそうに謝る月花さん。そうさせてしまった俺を責めてもいいと思うんだ。
でも彼女はきっとそんなことはしないだろう。
でもこれで少なからず俺が原因であることが分かった。避けたかった事態だったけど、せめて自分で解決ができるなら、俺は喜んで駆け回ろう。
「月花さんっ……! 大変な苦労をしましたね……。私の唐揚げ一個あげますっ! だから元気を出してください!」
同じテーブルにいるたわわ美少女が、残り一個になっている目の前の唐揚げを指差して、月花さんに取ってくれと訴えかける。
「えっ? 気持ちは嬉しいけど、それを貰ったら
「いいんです! 唐揚げなんてまた食べられますから。それよりも月花さんのほうが百万倍も大切です!」
きっとこの子なりに月花さんを元気づけようとしているのだろう。その姿は月花さんだけじゃなく、俺にまで元気を分けてくれる。
「えっと、それなら遠慮なくもらうね」
月花さんはそう言うと、たわわ美少女の前から唐揚げを取り、そのまま一口かじった。
「うん! サクサクでおいしいね!」
月花さんは笑顔で唐揚げを堪能している。俺だけじゃなく、たわわ美少女とも普通に話すようになっているようだ。次に三人で昼休みを過ごす時は、もっと楽しい話ができるようになってるといいな。
月花さんから聞いた話と甘泉先輩から聞いた話は、どちらも同じ三年生女子のことを言っているようだ。
放課後になり俺は三年生の教室があるフロアへと向かう。上級生の教室なんて普段の俺なら絶対に近づかない場所だ。
甘泉先輩から見た目の特徴とクラスを聞いていたため、わりと早くに見つけることができた。俺は教室の入り口から一番近くにいる女子生徒に声をかけた。
「あのー、すみません」
「えっと、何? うわっ、君カッコいいね!」
毎度のことながら、こう言われた時の返し方に凄く困る。
「ありがとうございます。ところでですね——」
ただ俺も少しは慣れているので、こうやってお礼を言いつつもサラッと流してしまうようにしている。
俺が甘泉先輩から聞いた名前を伝えると、その女子生徒は教室の入り口からその名前を呼んだ。
すると教室の奥のほうから、金髪ショートでピアスをした女の子が向かって来て、俺の前で立ち止まった。その姿を見た俺はこう思った。月花さんや甘泉先輩ほどじゃないにしろ、けっこう可愛いと。それと同時に、そういうことかと納得した。
「じゃ、後は二人でよろしくー」
呼んでくれた女子生徒はそう言って、教室の奥へと消えていった。
「私になんか用? へぇー、あんたカッコいいじゃん。あ、もしかして二年の冴島? 噂通り確かにイケメンじゃん」
いきなり呼び捨てか。俺のほうが後輩だから別にいいんだけど、甘泉先輩が素行がよくない人だと言っていたっけ。俺が苦手な人種だ。
「はい、二年の冴島です。今日は聞きたいことがあって来ました」
「何? さっさと言って」
「二年の月花さんを知っていますか?」
「あー、やっぱりそうくるんだ」
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