第24話 ギャルっぽい人に相談
最近、
周りに人がいないか十分に確認したつもりだったけど、誰かに見られていたのだろうか? こういう事態にならないように、普段から気をつけていたつもりだったけど、俺の配慮が足りなかったのかもしれない。
「あ、いたいた。おーい、
昼休みに教室の入り口から俺を呼ぶ声がした。声の主は、ギャルっぽい図書委員の
茶色がかった髪色で、肩辺りまであるゆるふわポニーテールに、眉毛までのふわっとした前髪。ふんわりとした髪型で、目鼻立ちがハッキリとしている美人だと俺は思うけど、やっぱりこの世界では冴えない扱いを受けている。
月花さんの噂の内容は、手当たり次第に男子に声をかけて誘惑しているというもの。この人も現在進行形で同じような噂が校内に広まっている。真実かどうかは分からない。
月花さんは一年生のたわわ美少女と食堂へ行っており、ここにはいない。俺が思うに、たわわ美少女は人の見た目だけで態度を変えたりはしないだろう。あの子もまた、同じ苦労をしているだろうから。
俺が先輩のところへ駆け寄ると、相変わらず柑橘系の香りが俺を包み込む。
「どうしました? こんなところまで来るなんて」
「ちょっと話があってねー。場所かえよっか」
そして俺と甘泉先輩は、屋外で人通りが少ない場所にある、校内のベンチに座った。俺の右側から優しい風に乗って、柑橘系の香りがふわっと届く。美人の先輩と二人きりなんて初めてで、もちろん心臓バクバクだ。
「いやぁー、ちょっと心配になってねー。前に図書室に来た時、女の子と一緒だったよね?」
「月花さんのことですか?」
「そうそう、やっぱりあの子のことなんだね。最近さ、あの子によくない噂が広まってること知ってる?」
「簡単に言うと、月花さんが手当たり次第に男子と遊びまくってるという……」
俺は少し言い
「そうそう、それねー。私と同じこと言われてるから心配になったんだよ」
「実は甘泉先輩の噂と同じだなとは思ってました。その……、先輩は気にしていないんですか?」
先輩からそのことに触れてきたので、俺も正直に伝えた。
「あぁー、あれね。あんなのは言わせとけばいいんだよ。『アンタらに私の何が分かんの?』ってさ。だってバカらしくない? 他人の悪意に振り回されて、私が私でなくなるなんて。そんな奴らのことを考える時間なんてムダだよ」
元々の性格もあるだろうけど、それはきっと甘泉先輩なりの対処法なのだろう。
「ほら私ってこんな見た目じゃん? まあ可愛くないってことだね。でさ、やっぱりいるんだよ、大した理由も無くそれだけで異様に嫌ってくる人ってのが」
元の世界でもチラホラとは聞くようになっていたっけ。
「面と向かって話してみた結果、合わない・嫌いだと判断されるのは全然いいんだけどさ。見た目だけに限らずそれすらせずにってのは、私には理解できない」
俺だって見た目で苦労してきたから分かる。俺の場合は、笑いをとったりするクラスの人気者になろうとしたんだ。見た目も含めて愛されキャラというか、悪意を向けられない存在になろうとした。
結果だけいうと失敗だったけど、それでも高校に入ってからは、そういう目で見られることは減ったんだ。
きっとその人なりの対処法があって、毎日を頑張ってるんだろう。でも月花さんは向けられる悪意を受け入れてしまっている。
『ただひたすら耐える』。それが月花さんの対処法なのかもしれないけど、本当はよく笑う女の子なのに、そんな人達のせいでそれが失われるなんて、見過ごせない。
「ま、あの子に限ってあんな噂はウソだと思うけどねー」
俺はその言葉を聞いて、「甘泉先輩はどうなんですか?」と聞きたくなったけど、やめておく。
「あれぇー? もしかして冴島くん、私の噂が本当か聞きたいのかなー?」
甘泉先輩が俺の顔を覗き込んできた。絶対俺の反応を見て楽しもうとしてる。
「い、いえ……。そんなことは」
「冴島くん意外とかわいいねぇー! ウケる」
「ウケませんから」
「大丈夫だってー。あんなのウソだからさ。だって私はまだなんだから」
何がまだなのかは聞いちゃいけないんだと判断した。
「甘泉先輩。月花さんの噂、なんとかならないでしょうか?」
「うーん、流した本人に聞いてみる?」
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