第19話 ギャル?
テスト勉強のため、
カウンターには俺から見て美人な女子生徒が一人。茶色がかった髪色で、肩辺りまであるゆるふわポニーテールに、眉毛までのふわっとした前髪。ふんわりとした髪型で、目鼻立ちがハッキリとしている美人だ。
「おっ? もしかして君、
俺と月花さんが通り過ぎようとすると、その女子生徒から名前を呼ばれた。
「はい。冴島です。えーっと?」
「あ、ごめんねー。『あんた誰?』って感じだよね。私は三年の
そういえば聞いたことあるな。甘泉っていう三年の女子生徒の噂。確か男子を誘惑して遊びまくっているとかなんとか。
もし俺なら、こんな美人お姉さんに誘惑されたらすぐついて行ってしまうだろうな。噂が本当かどうかは知らないけど、俺が見て美人の甘泉先輩は、きっとこの世界では苦労しているはず。
「甘泉先輩、俺を知っているんですか?」
「そりゃあ知ってるよー。二年の冴島っていう超イケメンの噂。ホントにイケメンだねー。へー、実在したんだぁ」
「俺、都市伝説じゃないですよ」
「きゃはっ! ウケる」
「いや大して面白くなかったでしょ。ここ図書室ですよ。こんな場所で雑談してていいんですか? 図書委員に怒られますよ」
「だいじょぶだって! 私が図書委員だから」
やっぱりかー。カウンターにいる時点でそうだとは思ったけど。図書委員イコールおとなしい女の子という式は成立しないようだ。
すると甘泉先輩は顔を俺にグッと近づけてきた。香水だろうか? 柑橘系の香りが目の前にいる美人お姉さんの魅力をさらに上げている。
そして俺の耳元で優しくささやく。
「ね、このあと私とイイコトしに行っちゃおっか?」
俺の脳をトロけさせようとしているんだろうか? それともハニートラップか? 美人お姉さんに冴えない俺が誘われるなんて、夢みたいなことが起きている。
初めてのことに戸惑っていると、制服の袖を引っ張られる感触があった。月花さんが控えめにつまんでいる。
「冴島さん、近いです……」
甘泉先輩との距離のことを言っているんだろう。グイグイと袖を引っ張る月花さん。そうだ俺には月花さんがいる。正直、俺一人だとヤバかった。
「甘泉先輩すみません。俺達、勉強しに来たんで、そろそろ……」
「勉強ねぇ。隣の女の子は彼女?」
「はぅっ! ちちち違いますっ……!」
質問に答えたのはなぜか月花さんだった。首を横にブンブン振りながら全力で否定する。えぇ……。なんだかショックだ。
「違うそうです」
「そっかそっかー。じゃあ私が攻めちゃってもいいんだね」
「ダメっ……!」
甘泉先輩が冗談めいて言うと、図書室に響き渡るんじゃないかってくらいの声で、月花さんが拒否をした。
「そんなの……ダメです」
俺の制服の袖を掴む力が強くなる。
「いやぁ私、全力で拒否されちゃったよー。それにしても冴島くんは幸せだねー。こんなにも想われてるんだからさー」
「そうなんですかねー?」
俺は少しおどけて返事をしたけど、こんなことは初めてだから、どう考えていいのかよく分からない。
「ま、とりあえず勉強しに来たんだよね? もし借りたい本があったら、私に言ってくれたらいーよ。ちゃんと仕事はするからさ」
「分かりました。ありがとうございます。月花さん、空いてる席まで行こう」
俺はそう促したけど、月花さんは動こうとしない。
「月花さん?」
「ダメです」
「ダメって、何が?」
「ここはダメっ……! わっ、私の家で……私の家に行きましょう!」
思ってもみなかった提案に、俺は返す言葉が見つからない。だって女の子の家に行くなんて初めてなんだから。
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