第18話 呼び止められる
別に「あざっす!」だけでもいいんだけど、受け取る側のリアクションが大きいほど、プレゼントした側も嬉しくなる。
買い物を終えた月花さんの手には大きな紙袋が。
「その袋、俺が持つよ」
「いえ! 大丈夫で——……やっぱりお願いしていいですか?」
月花さんは断ろうとしていたに違いない。でも俺の厚意をムダにしないようにと、わざわざ言い直してくれた。
その後は俺の希望で少しだけ本屋に立ち寄った。試しにラノベコーナーを見てみたけど、知っているタイトルは一冊も無かった。マンガも全部知らない。本当に変なところでここは異世界なんだと実感させられる。
どうやらこの世界でも、異世界ものが流行っているらしい。異世界の異世界ものって、どんな感じなんだろう。
月花さんのおすすめを教えてもらったけど、純文学っていうのかな? 俺には縁がなさそうなものばかり。
と、ここでタイムオーバー。そろそろ帰らないと夜になってしまう。電車に乗って俺達が住む街へと帰って来た。そしていつもの別れ道で立ち止まる。
「
「こちらこそありがとう!」
「あのね冴島さん。毎日めげずに頑張っていれば、いいことあるんだね!」
月花さんが笑顔を見せてくれた。本来はこんなにもいい表情ができる子なんだから、一部のタチの悪い人達のせいで、それが失われていいわけがないんだ。
月曜日。いつものように教室に入ると、いつものように
俺は悪いことはしていないと思ってるので、特に気にしない。一番後ろの窓際の席に座る月花さんの右隣の、自分の席へ向かおうとすると、後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには、金髪縦ロール、お嬢様、この世界では超美少女の
「冴島、おはようございます」
「おはよう、美集院さん」
いつも命令口調なのに、あいさつは毎回『ございます』まで言うところ、少し愛嬌があるかも。……そして無言。
「えっと、美集院さん?」
「えっ? あっ、とっ、特に用はありませんわ!」
そう言って美集院さんは、前のほうにある自分の席へと戻って行く。初対面で俺にいきなり、「私の彼氏になりなさい!」って言い放った人とは思えない慌てぶり。
改めてこのクラス、メンバーが濃いなと実感した。異世界だから?
昼休みになると、「さっえじっまさーん!」と言って目立ちながら、あの一年生のたわわ美少女の
そして次の休みには、約束通り月花さんと本屋めぐりをした。その時の服装は、一緒に買ったミニスカート。太ももの半分くらいの長さの黒プリーツスカートだ。バッグには俺がプレゼントしたキーホルダーがついている。
俺と会う時にちゃんと身につけてくれるなんて、嬉しいことをしてくれる。俺が「可愛い」と言うと、月花さんは「はぅっ……!」とフリーズしてしまった。
五月も中旬になり、さすがにこの生活にも慣れた頃、転生して初めての試練を迎える。中間テストだ。
俺は別に成績が悪いわけじゃない。ただ一つどうしても覚えられない科目があるため、一週間前になった今日から月花さんに勉強を教えてもらうことになったんだ。
そして二人で図書室に入る。俺はこれが初めての図書室だ。
当たり前だけど、見渡す限りの本棚。本好きにはたまらないだろう。時期が時期だけに、生徒の数は多い。カウンターには女性が一人。
(うわ、綺麗な人だ)
生徒であろうその女性は、俺から見てかなりの美人。それならばきっとこの世界では、不遇な扱いをされていることは想像に
前を通り過ぎようとすると、カウンターから声が聞こえた。
「おっ? もしかして君、冴島くん?」
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