第20話 人生初めての女の子の部屋

 まさか俺が女の子の部屋に入る日が来るなんて……! しかも超絶美少女の。


 図書室で美人の甘泉あまいずみ先輩に誘惑されたけど、「ここはダメっ……! わっ、私の家で……私の家に行きましょう!」という、月花つきはなさんの強い意志により、月花さんの家でテスト勉強することに。


 いつもの別れ道に来た俺達だけど、今日はそのまま月花さんについていく。


「月花さん、本当に家に行っていいの?」


「だっ、だって……! 冴島さえじまさんが困ってたんだもん。人助けだもん……!」


 ぷくっとほっぺたを膨らませる月花さん。いやまあ確かに助かったけど、助かってないというか……。


(女の子の部屋で何すればいいんだ!?)


 女の子の家の場所を知ることも初めてなのに、部屋に入るだなんて。イケメン(扱い)になっただけでこんなことになるのか。


 いつもの別れ道から数分歩くと、綺麗な家が見えてきた。洋風の外観をしている二階建てでモダンなデザインの、まるで外国にあるような家だ。


 玄関を開けると、まず正面に階段が見える。左右に部屋の入り口があり、奥にもいくつか部屋がありそうだ。


「えっと、階段をのぼって左の部屋が私の部屋です。私、飲み物を用意してから行きますから、先に入っていてください」


 月花さんはそう言うと、右の部屋へと入って行った。なるほど、そっちがキッチンか……。いやそれを知ってどうする!?


 俺は玄関ドアに向けて靴を揃えるという、普段はしないことをしてから、なるべく音を立てずに階段をのぼる。すると確かに左にドアがあったのでノックをして、「おじゃまします」と言いながら部屋に入った。誰もいないのに。


 広さは12畳くらいで広々としており、白を基調としているようで、フローリングの床にはベッドやテーブル、二人がけのローソファー・ラック・シェルフなどが置かれている。


 それらのデザインはいかにも女の子らしく、どれも可愛いらしい。

 学習机とイスも置いてあるあたりが、高校生の部屋だなーという感じだ。


(座る場所が分からん)


 緊張しすぎてそんなことも分からなくなる。ベッドの上か? いやそれはさすがの月花さんでも引くだろう。


 しばらく立っていると、ガチャとドアが開き、ジュース入りグラスが乗ったおぼんを持った月花さんが入って来て、それをテーブルの上に置いた。


「冴島さん、どうかしましたか?」


「いや、可愛い部屋だなって」


「あっ、ありがとうございます……。私の部屋に入った男の子、冴島さんが初めてです……」


 ミニスカート姿に加えて、またしても月花さんの初めてをもらってしまった。


「あの、どうして冴島さんは立ったままなんですか?」


「どこに座ればいいのかなーって」


「ふふっ、おかしな冴島さんですね! ソファーは座るためのものなんですよ?」


 そう言って月花さんが床に置かれたソファーを見たので、俺もソファーに注目する。


 ローテーブルの横に置かれている白いローソファー。背もたれのすぐ後ろにはベッドがあり、座るとドアが正面に見えることになる。


 それよりも注目すべきは二人がけということだ。まるでカップルシートのようで、二人で座れば密着すること間違いなし! ……え? いいの?


 どうやら月花さんもそれに気がついたらしく、慌てて口を開く。


「違うんです! あっ、あのっ、これはっ……! さっきのはっ、冴島さんの隣に座りたいってことじゃなくてっ! いえっ、そばにいたいですけどっ!」


『ふえぇ……』状態になった月花さん。慌てすぎて、また最後が一番恥ずかしい言葉になっている。今度も気がついていなさそう。


 かといって他にソファーやクッションは無いので、とりあえず一緒にソファーに座ることにした。


 すると月花さんから柑橘系のとてもいい匂いがふわっと届く。おかしいな、ここに来るまではそんなことなかったのに。


 すぐ右隣には月花さんがいる。改めて見た月花さんの横顔はとても美しくて、言葉を失うほどだ。


「冴島さん、私、今すごくドキドキしてる……」

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