第14話 頼もしい月花さん
次の休みも
月花さんは服を見に行きたいと希望した。多分だけど、似合ってるかのジャッジを俺がすることになるような気がする。
当然というか、俺は女の子の買い物に付き合ったことは無い。自分自身のファッションセンスも危ういのに、こんな可愛い子に合う服が俺に分かるわけない。『似合ってる』を『ぴったり』と言ったりして、いかにも違う感想のようにしてみようか?
うーん、さすがにそれは申し訳ない。やっぱり思ったことを素直に伝えようか?
「——さん、
俺を呼ぶ可愛い声が聞こえる。どうやら隣からのようだ。
「冴島さん、もうすぐ降りる駅に着きますよ」
どうしようか考えすぎて、月花さんに呼ばれていたことに気が付いていなかった。ふと左を見ると、月花さんが俺の顔を覗き込んでいた。
「うぉっ!」
「きゃっ!」
驚いて体ごと後ろにそらした俺の動きと声に驚いて、月花さんが可愛らしい声を出す。顔だけじゃなく声まで可愛いとか、ズルくないですかね。
「ごめん、ちょっと考え事してた」
「い、いえ、私こそ大きな声を出してごめんなさい」
そのままお互いなんとなく無言で電車に揺られる。月花さんは今、何を考えているんだろう。変に思われてないかな。俺が今考えていることは、「月花さん超可愛い!」なんだけど。
電車を降りたはいいものの、俺は異世界に来たばかりだから、土地勘なんて全く無い。いわば引っ越し直後のような感じ。
「実は俺この辺りのこと詳しくなくて」
「そうなんですか? でも大丈夫です。ショッピングモールの場所なら知ってますから」
今日は月花さんの後ろをついていくしかないようだ。ちょっとカッコ悪いかな? 次の休みに散策して、少しでもいろんなことを覚えていかないと。
……あ、そういえば次の休みも月花さんと会う約束をしてるんだった。いやー、困ったなあ! ……なんて考えているうちに、周りに人が増え始める。
俺が想像していたよりもずっと規模が大きく、四月なのに人の多さで熱気にあてられて暑くなる。俺、人混み苦手なんだよ。
「凄い人の多さだね。いきなりだけど、服を見るという目的を最初に果たそうか。月花さん、案内してくれる?」
ここで変に知ったかぶりをして、月花さんを付き合わせた挙句、迷いました。はシャレにならない。なので、ここは素直に月花さんに任せることにしよう。
「はい、わかりました」
月花さんが歩き出したので、それについて行く。というよりは横に並んで歩く。
「ほんとに大きな施設だね。食事できる店だけでもいくつあるんだろう」
「ですよね。たくさんお店があって迷っちゃいます」
そんなことを話しながら歩くけど、ずいぶんと遠いんだな。さすが超大型施設だ。
ここで月花さんが立ち止まった。
「——いました……」
「えっ?」
「迷いました……」
「えっと、服を見に行こうとしてるショップの場所が分からなくなったってこと?」
月花さんは黙って小さく
「本当にごめんなさい! じっ、実は私もここに来るのは本当に久しぶりで、数えるほどしか来たことがないんです……! でもでもっ、せっかく冴島さんが私を頼ってくれてるから、期待に応えたくって」
申し訳なさからきているのだろうか、月花さんはいつもより早口だ。
「全然気にしなくていいって! そもそも俺が知らないのがいけないんだから」
「うぅぅ……」
月花さんは『ふえぇ……』といった表情をしていて、俺は不覚にも可愛いと思ってしまった。
その後は案内図を確認して、なんとか目的地に到着したのだった。
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