第4話 笑顔の可愛い女の子
「もしよかったらでいいんだけど、これから一緒に帰らない?」
「……ご迷惑じゃなければ」
俺がそう提案すると、
俺のほうが背が高いため、せっかくの大きくて綺麗な目が、長い前髪に阻まれてよく見えない。
そして思った通りというか、廊下を歩いてるだけで周りからの視線を集めてしまう。ヒソヒソ話してる人も。これでは逆に月花さんにツラい思いをさせてしまうだけなんじゃないかな?
「ごめん、俺のせいで目立ってるかも」
「い、いえ……。慣れてますので」
そんな慣れ、悲しすぎる。それにしても他人のカップルがそんなに気になるのだろうか。ましてや悪いように言うなんて。
例えば俺がもし元の世界で、俺みたいな冴えない男が可愛い女の子を連れて歩いてるところを見ると、『どうしてそうなった?』とは思う。わりとガチで聞いてみたい。だからって「なんであんな奴が?」なんてことは口に出さない。
もしかしたら女の子からアプローチしたのかもしれないし、見た目が好みだったのかもしれないし、内面に惹かれたのかもしれない。
いずれにしろ、それぞれに魅力があったからこそ、カップルになったんだ。少なくとも俺は、人の容姿をバカにすることは絶対にしないように決めている。
俺は月花さんと並んで、堂々と廊下を突き進む。俺が恥ずかしそうにしていたら、月花さんに自信を取り戻してもらう計画が台無しだ。
月花さんとは途中まで帰り道が同じということらしい。校門を出た俺達は、広い歩道を並んで歩く。さすがにここまで来ると、生徒の姿はガクッと減った。
「もしかして月花さん、普段からあんな酷いことを言われてたりする?」
「い、いえ……! いじめられてるとかではないです。ただ、男の子は私とあんまり話してくれない……です」
(男め……。俺も男だけど)
元の世界でも可愛い女の子にだけ、あからさまに優しくして他の人には冷たい男、いるよね。
「そうなんだ。月花さん、知ってる? 俺も男なんだよ」
俺がそう言うと月花さんは俺を見て、何も言わない。ぽかんとしているという表現がピッタリだ。
(……しまった。あの言い回しだと、『俺も男だから君に手を出すよ』みたいな意味に聞こえてしまう)
冗談のつもりだったんだけど、ヘタすぎた。そりゃぽかんとするよ。
「フフッ、それは見れば分かりますよぉ」
月花さんが笑った。笑顔がすごく似合う。そして可愛い。性格もいい。ほんとになんでこんな子が不遇な扱いされてるんだろう。
改めて見ると、スタイルも抜群だ。白と薄い青を基調とした、ひざが見え隠れする長さのチェック柄スカート。白いスクールシャツに胸元にはスカートと同じ柄のリボン。
脚はスラっと長く、白い肌にそれらの服装がとても映えている。そして上半身の大きな膨らみ。顔を見て話をしている以上、目に飛び込んでくるのは自然。たまたま。道理。
「月花さん、笑顔も可愛いね」
自分でも信じられないほどに、恥ずかしいセリフがスラスラ言えてしまう。もちろん本心だけど、俺がイケメン扱いされていることに、俺の気が大きくなっているんだろうか。
だとしても、俺は
「そっ、そんな……可愛いだなんて。
本音だけど、言い過ぎに注意だ。あまりに連発すると軽くなってしまう。
「あっ、私こっちの道なので」
「そうなんだ。結構短かったね」
実際、校門を出てから別れ道までは数分といったところだった。
「月花さん、また明日」
俺がそう言うと、月花さんからも返って……来ない。月花さんは黙ったままだ。
「月花さん?」
「……はいっ!? えっと、また明日って言ってもらえたことが嬉しくて。冴島さん、また明日ですね!」
月花さんは今日一番の笑顔だった。
次の日、俺が登校していると何やら騒がしい。その中心には金髪で短髪の男子と、その近くには女の子の姿がある。男のほうは昨日、月花さんに暴言を吐いた百本桜だった。
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