第43話 えいゆう と むきあう
お、おまえたち。どうしてここに?
めのまえに あらわれた まほうつかいと にんぎょうけんしに まおうは おどろきます。
ま、あたしたちは ゆうしゃのなかま だからね、っていいたいとこだけど。しりあいに おせっかいな けんじゃがいてさ。あんたたちに あいたければ『さいぜんせんのまち』に いけばいいって おしえられたんだよ。
まほうつかいのおんなのこは あけすけと いいました。
しかし せっしゃたちが いざ まちをおとずれてみれば『えいゆう』と『ゆうしゃ』が あらわれたと おおさわぎであった。そして、ふたりが そろったということは『えいゆう』と『まおう』が たいめんした ということでござる。
そこへ きかいにんぎょうのけんしが たんたんとせつめいをくわえます。
これは まちがいなく たたかいになると おもってね、こうして おおあわてで かけつけたってわけ。
まほうつかいと にんぎょうけんしは、まよいのない めで『えいゆう』と むきあっています。
ふ~ん、わたしたちの たたかいに かけつけたってとこは りかいしたけど、どうして ふたりは まおうがわに たってたたかうのかな? ゆうしゃちゃんは うえで けんがくしてるわけだし、わたしの じゃまをするりゆうに なってないよ。
『えいゆう』は まおうをころす じゃまを されたことを おこっています。
む、たしかに どうして ゆうしゃは たたかっていないでござるか?
にんぎょうけんしは おどろいたようすで うえをみあげます。
あのこなりに まよってるってことでしょ。いまは まだ、まっていてあげなよ。
まほうつかいは ゆうしゃに めをむけることなく、めのまえの『えいゆう』に ちゅういを はらいます。
いちおうさぁ、いっておくと わたしは にんげんみんなの『えいゆう』なわけ。だから、できることなら にんげんをころしたくない。まあ つまるところ、じゃまだから どこかに きえてくれないかな。
『えいゆう』は『まじんごろし』をふりかざし、これが さいごのちゅうこく であると ふたりにいいます。
おい、そこの おんなのちからは ほんものだ。おまえらが おれをかばう りゆうもないだろ。はやくどこかに にげておけ。
ふたりの うしろにいた まおうも、てったいするように よびかけます。
べつに あたしは あんたのために たたかうつもりは ないっての。あたしは あたしが きぶんよくなるために たたかうだけ。このまま、あのこが じぶんのきもちを きめるまえに あんたが しんだら、ひきずっちゃうでしょ。それって、あんま きぶんが よくないからさ。
そういいながら、まほうつかいのおんなのこは じぶんのまりょくを たかめていきます。
そちらは そういう りゆうであったのだな。せっしゃは ただ『とも』の ちからに なりたいとおもった だけでござる。ゆうしゃとまおう、ふたりの『とも』の ちからに。それに『えいゆう』どの、せっしゃは にんげんではなく『きかいにんぎょう』、えんりょは いらぬ。
にんぎょうけんしも にほんの『かたな』を てにして りんせんたいせいに はいります。
へ~、ずいぶんと りゅうちょうに しゃべるから もしかして にんげん なのかなと おもったけど、やっぱり『きかいにんぎょう』だったんだ。なら、ほんとうに えんりょしないよ? わたし、『きかいにんぎょう』に いい おもいで ないからね。
さいごのちゅうこくを むしされ、『えいゆう』は ふたりをたたかいの たいしょうであると みとめます。
おまえたち、やめろ! たたかうのは おれだけでいいだろっ。
まおうは たちあがって、ふたりを とめようとしますが、『えいゆう』が なげた おおきなつるぎが とんできて、まおうのむねをふたたび つらぬきました。
がはっ。
まおうを じめんに ぬいつけるように つるぎが つきささります。
からだに ささったままなら、ふっかつの しようもないでしょ。それは『ほしつるぎ』、そこのドラゴンをうちたおした とっても おもいつるぎだよ。ちょっとやそっとじゃ ぬけないから、ふたりをたおすまで だまってそこで みてたらいいわ。
『えいゆう』が つめたいこえで まおうに いいはなちます。
く、くそっ。ほんとうに ぬけやがらねえっ。
まおうは いたみをこらえながら つるぎをひきぬこうとしますが、びくともしません。
さ、きなよ ふたりとも。すぐに さいきふのうに してあげるからさ。
『えいゆう』は ふたりをまえに よゆうのようすです。『まじんごろし』も いつのまにか どこかにしまっています。
へぇ、まおうさえ いなければ、あたしたちなんか てき じゃないってこと?
まほうつかいのおんなのこは ほんのすこしだけプライドが きずついたみたいです。
それは かんちがいよ まほうつかいちゃん。まおうが いたところで あなたたちは てきに ならないわ。ただ、まおうと いっしょに ころさないようてかげんするには、こうするしかないじゃない?
『えいゆう』には わざと あいてをおこらせようなんて きもちはなく、ただ こころからの はいりょを くちにした つもりです。
それが、まほうつかいのプライドを おおきくきずつけました。
あたしをあいてに そこまで いったやつは はじめてだし、あんたで さいごだよ!
めにもとまらない はやさで まほうつかいは『えいゆう』にむけて かけだします。
がっしゃ~ん!
どっご~ん!
めにもとまらない はやさで まほうつかいは まけていました。
うん、ただの にんげんにしては じゅうぶんつよいわ。ドラゴンを たおしたころの わたしとなら いいしょうぶ だったかもね。
ドラゴンのほねに たたきつけられて、まほうつかいは いしきをうしないます。
さて、つぎは にんぎょうくんの ばんだけど。……なんのつもり? きみの『かたな』から ぜんぜん さっきをかんじないんだけど。もしかして、わたしのほうこそ なめられてる?
『えいゆう』は あたらしい つるぎをとりだし、まゆをピクリと つりあげます。
ごかいでござる。そこな まおうに かつまで、せっしゃはだれのいのちも とらないとやくそくしている。それは、きでんが あいてでもおなじこと。
それを、なめてるって いうの! って、あれ?
『えいゆう』が にんぎょうけんしに きりかかったとき、おおきな いわかんをおぼえます。てにした つるぎが、あまりにも かるすぎたのです。
やはり、ごかいでござる。せっしゃは きでんをなめてなどいない。いのちをうばうことは しないが、それいがいの ものは すべて きりすててみせよう。
にんぎょうけんしが にほんの『かたな』をさやにおさめるおとが するのとどうじ、『えいゆう』のつるぎは バラバラに きりおとされていました。
え、うそぉ?
『かのじょ』が おどろいた つぎのしゅんかんには、そうちゃくしていた しんくのよろい までもが みごとに きりきざまれていたのです。
ちょ、ちょっと なにしてくれるのよ にんぎょうくん! このよろい わたしの おきにいり だったのにぃ。
ボロボロになった よろいをみて『えいゆう』が ひめいをあげます。
ふむ、それは きのどくなことをした。しかしこちらも なかまを ボコボコにされている。あやまるきは ないでござるよ。
そういって、にんぎょうけんしは ふと うえをみあげます。
そこには、つらそうな ひょうじょうで なにかをこらえている ゆうしゃのすがたがありました。
かのじょは すでに せいけんをぬいています。それでも、そこからさきへ あしをふみだすことができません。
…………っ。
せいけんを あまりにも つよくにぎりしめているせいか、にぎった てのひらから ち が したたりおちています。
それでも、ゆうしゃのからだは うごきません。
やりたいことと、やるべきことが いっち していないからです。
そうか、ほんとうに。ゆうしゃも なやんでいるのでござるな、いぜんの せっしゃと おなじように。
そうであるのなら、かのじょのためにも じかんをつくらなければ、と にんぎょうけんしは ふたたび『えいゆう』に たいして『かたな』をぬきます。
『えいゆう』は あたらしいよろいに きがえて、あたらしいつるぎを てにしていました。
つぎからつぎへと、まるで てじな のようでござるな。
どこからともなく あたらしい ぶぐをとりだす『えいゆう』に にんぎょうけんしは いいます。
これも ふしぎアイテムの ひとつの こうかだけどね。でも きみが あいてだと つぎからつぎに こわされそう。
むろん、せっしゃは そのつもりでござる。
それは いやだなぁ。だからさぁ、できることなら どこかに いってくれない? わたしも これいじょう そうびをこわされたくないからさ。じゃないと、わたしが にんぎょうくんを こわすしかなくなる。
その じょうけんであるのなら、どこかに いくのは きでんのほうでござる。
にんぎょうけんしは『かたな』をぬいたまま いっぽも ひくようすは ありません。
こうしょうけつれつ、じゃあ しんでも もんくいわないでね。
『えいゆう』は みずから にんぎょうけんしに むけて はしりだします。て にしているのは きかいじかけの からくりのような、いびつなつるぎ。
どのような ぶきであれ、あるじの つくりあげた この『かたな』は すべて きりふせるでござる、っ!?
にんぎょうけんしの『かたな』が いっしゅん とまります。それは『えいゆう』が よろいをはずして むきだしのからだで『かたな』をうけとめに きたからです。
はい、うごきがとまったね。……ダメだよ、じぶんのしばりプレイをひとに はなしちゃ。こんなかんじで かんたんに りようされるんだから。
きかいじかけのつるぎが、きかいじかけのにんぎょうのむねを かるくつらぬきます。
──────────むねん、で ござる。
ただ、それだけで、にんぎょうけんしは いとのきれた にんぎょうのように、ちからなく じめんにたおれました。
お、おまえ! なにをしやがった!?
むねを『ほしつるぎ』につらぬかれたまま、まおうが さけびます。
この つるぎのなまえは『にんぎょうごろし』っていうんだ。だから、このにんぎょうくんは もう しんじゃったんだ。
あまりに あっけなくたおれた にんぎょうけんしを、あわれむように『えいゆう』は みています。
でもまあ、なんかの ひょうしに ふっかつされても こまるし、とりあえずバラバラにしておこっかな。ごめんね、きみは にんぎょうだから、わたしのまもる たいしょうじゃないんだ。
むじひな ことばと ともに、『えいゆう』の『にんぎょうごろし』が もういちどふりおろされます。
やめてくださいっ!
ですが、『にんぎょうごろし』は『えいゆう』の ずじょうから とびおりてきた ゆうしゃの せいけんによって うちくだかれました。
へ~、あなたまで わたしの じゃまをしちゃうんだ、『ゆうしゃ』ちゃん?
おこっているのか、さめているのか わからないこえで、『えいゆう』は かのじょをみています。
もう、やめてくださいっ。もうっ、これいじょう。わたしの なかまに て をださないで!
なみだを こぼし、せいけんをにぎった ては ふるえながら、『ゆうしゃ』は ようやく『えいゆう』と むきあう けついをしたのです。
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